こんにちはー、神奈川建一です。

僕は日頃スーパーのお酒コーナーでノンアルコール飲料などを買いながら思ってました。「この色とりどりの安い日本酒パック酒は、本当はどんな味なんだろう?」と。


僕は最近の地酒の吟醸酒、純米酒ブームから日本酒に入ったクチで、大手の安酒の悪口をさんざん聞いて育った世代のファンなのです。そりゃあ、安いパック酒なんて恨まれてましたよ。「あれが日本酒のイメージを悪くしてる」とか「安酒飲むと次の日二日酔いになる。地酒はそんなことない」とか。よほどの屈辱を先輩方は味わったんだなぁと思いましたね。

しかし、僕は日本酒飲むようになってから、一度もパック酒をちゃんと飲んだことはないのです。これはいけません、自分で体験してないことを語るなんて!それは賭ごとしない麻雀をプレイして、麻雀を知ったような気になるのと同じです!

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と、いうことで4つのパック酒を買ってきて飲んでみることにしました。名付けて「パック酒がぶ飲み大会」!(参加者僕1名)どんどん、ぱふぱふ~!


それではレギュレーションを諸君に説明しようッ!

買う場所は近所のごくごく普通なスーパー。糖類の添加してあるものは不可とした。さすがにそれは地酒との違いがありすぎる。今回の試飲会は、地酒の特定名称酒との公平な比較が目的なのだ。なので、白鶴の「まる」や大関の「のものも」などは含まれてないッ。

そして、それらを温度帯別にそれぞれを比較してみる。「冷酒(15℃)」「常温(20℃)」「ぬる燗(40℃)」「熱燗(50℃)」で分けて飲む。温度変化による味の変化こそが日本酒の面白さだから、パック酒でもしっかり検証するのだッ。


それでは激戦の中から選ばれた選手達を紹介するゾっ!!

1番 沢の鶴「米だけのお酒」900ml/645円(税込)

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純米酒No.1ブランドという文句に惹かれて購入。混ぜものがない純米酒というのも、地酒マニア的に嬉しいポイントだ。混ぜものが無ければないほど日本酒オタクは喜ぶからのう。価格は最低ラインだが、どこまで魅せてくれるか。
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2番 菊正宗「キクマサ ピン」 900ml/645円(税込)
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沢の鶴と同じく兵庫の灘からは、あの菊正宗が登場だぁ!菊正宗といえば、関東の老舗居酒屋でも絶大な信頼を受けている蔵。その看板パック酒に僕の期待は最高レベルです。どんだけアルコール添加(清酒に認められてる醸造用アルコールを混ぜること)されているのか、わからないけどね!
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3番 高清水「辛口パック」 900ml/820円(税込)
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秋田からの刺客、高清水も参戦!酒の国秋田最大の蔵元が全国で売るパック酒。わりと居酒屋でも見るし、地酒的にいけるんじゃね?と安直に考えて購入。西の方のお酒達に対して、雪国パワーを見せつけてくれるか。期待である。
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4番月桂冠「山田錦」 900ml/861円
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おおっと、ここでプレミア酒の参戦だぁ~!参加酒中最高額のお値段と、山田錦使用の看板(ただし55%のみ使用)がギラリと光る。酒米の王者による金持ちファイトを見せてくれるのか。「山田錦にも等級があって~」みたいなマニア解説は禁止。ちなみに純米酒。
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さあ、それではさっそく試合を始めようじゃないか!

1:冷酒で対決!どれだけこの温度で飲めるかが、お父さん達の評価のポイントだッ(15℃)
resizeP1060508温度計あるとより楽しめますよ。

沢の鶴「米だけのお酒」:キリッとした感じの辛口テイスト。意外とうまいじゃん!
菊正宗「キクマサ ピン」:いわゆる昔な感じのグワッとくる甘いお酒だ。全然飲めるけど、若い人には好かれなさそう。
高清水「辛口パック」:甘さは少なく、ガッ!と辛口がくる。これは辛い!濃い!刺身より煮魚って感じ。さすが秋田。
月桂冠「山田錦」:他と違い、かなり淡麗な味。綺麗な味ではあるが、安酒的な味の薄さがある。

意外にうまいな!というのが感想です。どれも古臭い味とは言えるかもしれないけど、それは好みの問題であって、お酒の質が悪いという気はしない。月桂冠は明らかに安い薄っぺらい味でしたけどね。正直びっくり。やるじゃあないか、お前たち!


2:常温で勝負!酒質が問われるのはここが本番!(20℃)
resizeP1050049常温保管は冷蔵庫使わないから、楽なんですよね~。

沢の鶴「米だけのお酒」:香り少なめ。糖類添加してないのに、なんか砂糖が入ってるような違和感あり。
菊正宗「キクマサ ピン」:香り濃い目。いわゆる嫌われる日本酒の匂いかな。グワッと辛さがあり、韓国のりと飲んだら、えらく辛かった。
高清水「辛口パック」:甘~い感じがいかにも秋田のお酒である。しかし、おいしいとは言えないなぁ。
月桂冠「山田錦」:柔らか~い甘さ。吟醸酒っぽい。山田錦ってこいう感じでしょ?というメッセージを感じる。でも冷酒同様薄っぺらさが辛い。

常温がヤバかったです。これはおいしくない!パック酒は絶対温度をいじって飲むべき。ここから推測するに、いいお米を使ったり、手間ひまかけて造ったりすると、常温に差が一番出るんじゃないかなと。とにかく、常温はオススメできない!


3:ぬる燗で決めてやる!今日本酒フリークスで一番アツい飲み方(40℃)
resizeP1060500すぐぬるくならないよう、こういう保温器があると便利。

沢の鶴「米だけのお酒」:フルーティではない甘さと辛さが酸味とともにくる。うまい!バランスいい!
菊正宗「キクマサ ピン」:辛さが減退し、酸が目立ち始める。おお、飲みやすいんじゃね?
高清水「辛口パック」:酸味が加わった、爽快感が辛さと共にきて、このお酒の甘さを吹き飛ばす!おいしい!
月桂冠「山田錦」:アルコール感が鼻に抜ける。甘さは常温以下と同様に健在。あんまり変化なしかな。

お燗の定番ぬる燗。多くのパック酒が、温度を上げると酸味が加わってきて、これが飲みやすいんです!最近の地酒は酸をうまく使うから、僕にとっても飲みやすく、うれしい変化。特に沢の鶴と高清水は、とてもいい方向への変化で面白かった。変わるもんだなぁ。ただ、すぐ冷めてしまい、そうなるとおいしくないので、温度の維持に気をつけるべし。


4:最後は熱燗!限界までヒートして、その味の真髄を見せてくれッ!!(50℃)
resizeP1060511急速熱燗の友「タンポ」。気軽に半合とか燗できますよ。

沢の鶴「米だけのお酒」:香りは安酒特有の生臭い感じ。これは苦手な人多いだろうなぁ。味はぬる燗と変わらず、甘酸っぱくてとてもうまい。
菊正宗「キクマサ ピン」:凄く柔らかくなり飲みやすくなる。ツンと香るのはいかにも日本酒的なアルコール感。酸が最初にくる僕好みの変化。ゆる~く飲める優しい味。
高清水「辛口パック」:これまた香りはいかにも日本酒って感じ。居酒屋の銘柄書いてない「熱燗」をオーダーすると出てくるような味だ。とはいえしっかり飲める。甘さの濃さは相変わらずで、秋田らしい。
月桂冠「山田錦」:酸っぱくなる!これはこれで面白い。香りは控えめで他の3つとは違う感じ。甘さも酸味もすっ飛んで、爽快な辛さだけになる。うまい!

熱燗、これがびっくりで、全部おいしくなる。特に月桂冠はやっとおいしくなったかと一安心w 総じてスッキリした味になり、飲むのが楽。寒い時に飲めば、本当においしい酒だろう。パック酒の飲み方としては最高にオススメ。匂いは、まあ、我慢で!



結論:パック酒だって美味しいじゃん!(ただし、常温を除く)

合計3.6リットル、2ヶ月かけて飲みましたよ(まだ残ってますが)。その感想はタイトルの通りです。十分イケる、特に熱燗はとってもいい!ホント、熱燗の飲みやすさはびっくりしました。日本酒の飲み方の多様さが、とってもありがたいものだと再認識しましたね~。

思うに、パック酒を買う人は、飲み方(温度の付け方)が常に決まってるのではないでしょうか。ある銘柄でおいしい飲み方知ったら、ずーっとその銘柄で同じ飲み方で飲んでるんじゃないかなぁと思いました。あれです、タバコの銘柄ずっと変えない感じです。

例えば、あるパック酒が熱燗でおいしいなら、ずっと同じ温度の熱燗で飲んでれば、まあ満足なわけですよ。ちゃんと酔えるしおいしいし。別にまずいのを我慢してるわけじゃないのです。暑くなってきたら、ビール飲めばいいわけですしね。

パック酒は「まずい、まずい」言われていて、そんなにまずいなら、なんで売れてるの?と思ってました。が、なんのことはない、ちゃんとおいしいから売れてるのです。ただ常温みたいな、まずい温度帯があるだけでね。格安パック酒の存在意義がわかって、とても有益な企画でした。



ただ、じゃあ、このパック酒に未来があるのかと言われると厳しい。これらが日本酒人口の拡大に役立つ可能性は感じないです。発泡酒や缶チューハイ系が新しい需要を作り出したようなことが、パック酒から生まれるような気はしません。すでに日本酒が好きな人が飲み続けるものであり、パック酒飲んで「日本酒好きになりました!」という人は出ないでしょう。

僕が個人的に期待するのは、まず大手蔵が積極的である「発泡性日本酒」。あれはスーパーで簡単に手に入る上にフルーティな甘さがあり、日本酒っておいしい!と新しい需要を作れそう。

もう1つは「獺祭 純米大吟醸50」に代表される、新しいスタンダード日本酒です。今のところ獺祭しかないのが残念ですが、「手に入れやすい高級日本酒」というカテゴリーは、きっと日本酒の未来の重要なヒントであると思います。


以上、僕のパック酒飲み比べ体験記でした。長い文章、お読みいただき、ありがとうございました。少しでも楽しめたら嬉しいです!

※コンビニで買った安酒飲み比べ記事を書きました。よろしければ、こちらも読んでいただけると嬉しいです!



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