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味の傾向:
あらゆる雑味と欠点が取り除かれ、水の味、酒の味、酒の香り、ただそれだけを感じられる大吟醸酒。時間が経っても衰えないメロンの香り、世界最高の水ってこうなんだと思わせるようなミネラル感、永久に口の中にとどめたい滑らかさ・・・完全なお酒とはこれのことだ。

おすすめシチュエーション:冷蔵庫から出して、少し経ったぐらいの10℃~15℃が理想。肴はとにかく淡白なもので!ヒラメ薄造り、カニ酢、アワビ酒蒸し、白魚の天ぷら、ゆず大根、サバの刺身、松茸お吸い物、和食の極みを味わえる料理に合わせよう。

評価:95点/100点(大吟醸の完成形。まだ僕が未熟で、全体を把握すらできてません)

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待たせたな!今年度当ブログ、最高の一本をお届けするぜ。福井の蔵元が醸す「黒龍(こくりゅう) 大吟醸 しずく」であーる。うおー、ついにこのブログでも有名なお酒をご紹介することができたよ!十四代どころか飛露喜も買うことができない購買力の低いブログだけど、今回はお役に立てそう。有名なお酒ってなんで有名なの、ってのも知りたいじゃん?今後も入手でき次第、できる限り正確なレビューを書いていきたいです。今後ともよろしくお願いします(代理購入してくれたあきかずさん、超サンキュウ!)。

さて、この黒龍・大吟醸しずくはどういうお酒かと言うと、年2回出荷される大吟醸で兵庫県東条地区産山田錦100%使用で精米歩合35%、アル度15%の日本酒である。定価は4合瓶で5250円(税込)、一升瓶で10800円(税込)だ(他に同価格の大吟醸「八十八号」、さらに上級の「石田屋」「二左衛門」という純米大吟醸がある)。まあ、スペックと価格だけ見ると、凄いは凄いけど他の蔵元もつくってそうなお酒である。ぱっと見感じるのは「純米大吟醸じゃないの?」ってところだろうか。今時の最高級品は皆純米大吟醸だからね。黒龍は上位2品目が醸造用アルコール添加の大吟醸なのだ。このあたり、秘密がありそうだよねぇ?(わくわく)


では、さっそく飲んでみよう!しっかり冷やして、グラスにそそいでから温度を上げる。色はごく普通の淡い黄色かな。もっと透明かと思ったけど、八海山みたいに透明度99%!みたいなことはなかった。香りはメロン、もう完璧にメロン!そのままメロンがお酒に浸かってるんじゃないかってぐらいメロンだ。吟醸酒の香りとしてメロンの例えはよくあるけど、それとは比較にならないっすよ。他の吟醸香は、例えばバナナが混じったり、日本酒特有の油脂感、マジックインキ感が複雑に絡み合っていることがほとんど。このお酒は純粋にメロンなんだよ!この感動、伝わるかな?

飲んでみる。ごくりごくりごくり。これは・・・超うまいミネラルウォーターを日本酒に転生させたかのような味だ!まず飲んでみると、甘味もうま味も酸味もない。ごく薄く苦味があり、これは何杯も飲み進めると強くなっていく。ミネラルウォーター好きに説明するなら、エヴィアンのようなビターな水の味である。

え、そんな無味乾燥な味なのかって?もちろん違う、それはとんでもない滑らかさの存在があるからだ!いやー、これが素晴らしいのなんのって。滑らかさというのは味ではなく触覚だけど、人というのはこの滑らかさ、まろやかさにおいしさを感じる生き物なのだそうだ(カレーがどう調理してもおいしいのはそのせい)。この黒龍しずくの滑らかさは、「人間を強制的に快感を覚えさせる装置」じみたヤバさを感じさせるものである。

そしてこのお酒の真の味は、食事と共に飲んだときに現れる!お吸い物や刺し身などと食べると、隠されたうま味、甘味が一気に出てくるのだ。うま味は水の味を変化させ、ちょっとお硬い味だったものを、柔らかい絶品の軟水のようにしてくれる。ミネラルウォーターで例えれば、ボルヴィックやクリスタルガイザーに変わったような感じだ。そして甘味!これまたメロンとしか言えないような甘味がじんわり出てくる。香りによる味覚の錯覚が大きいけど、一瞬メロンの果肉すら感じたよ。マジで。合わせる料理によってはスイカのイメージにもなる。なんですかこれはぁ・・・。

辛さが好きな人も安心してほしい。最初から存在する苦味は、ちょっとの操作(合わせる食事のチョイス)ですぐ鋭い辛さに変化するのだ。僕の感覚では、濃口醤油などがスターターになるっぽい。しかもこの辛さ、普通の辛口とは違うんだよね。なんというか儚く繊細?そんな印象の辛さなのだ。うーん、これは語彙力なくて伝わらなさそうだ・・・すまん。

もう、相当長い文章になってきたけど、さらに書かせてくれ!(笑) 驚くことに、香り高い大吟醸酒なのに、開栓後全く劣化しないのだ。このお酒は開けてから1ヶ月で飲みきったのだけど、その1ヶ月目でも問題なくメロンの香りだった。これ、常識的にありえなくないですか?なんで香り飛ばないの?最近人気のフルーティ系なんて、3日も保たないのも珍しくないのに!!真っ先にイメージしたのはウィスキーなどの蒸留酒。あれは香りがすぐ消えたりしないじゃないですか、あれですよ。やはり黒龍のアル添に特別な秘密があるのだろうか。以前黒龍を扱っている酒屋さんが、なぜ黒龍はアル添ばかりかというと、「長い鑑評会の審査期間を耐え抜くためだ」とおっしゃっていたけど、これがそうなのかな。あ、さすがに1ヶ月経つと味はやや甘めに変化します。でもその程度で、バランスは崩れない。このお酒には普通の常識通じないな。


はい、もー無駄に長くなりました。読んでくれた方、ありがとう!この感動が少しでも伝われば幸いだ。正直食事とのペアリングはなかなか難しく、最適解みたいなものを探るには720mlじゃ足りなかったぜ。でも「こうやったら、ああなるかな?」みたいな想像もしやすく、実にユーザーフレンドリーなお酒でもあった。黒龍は福井の料理とどう合うかを至上命題に掲げてお酒をつくってるって聞いたけど、なるほどと頷ける。黒龍は食中に飲むためのお酒。これを理解すれば、もっと楽しめると思うぞ。

「黒龍 大吟醸 しずく」、日本酒の最高峰、その1つであることは間違いないぜ!ぜひ素敵な料理、素敵な飲み屋と共に体験してみて欲しい。

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名称
:黒龍 大吟醸 しずく(H29BY 火入れ)
精米歩合:35%
酒米:兵庫県東条地区産山田錦100% 酵母:自社酵母
アルコール度:15%
日本酒度:+3
酸度:不明
蔵元情報:黒龍酒造 株式会社(福井県)
購入価格(税込):5400円/720ml
購入日:平成29年12月4日
購入店:碇屋酒店(東京都三鷹市)




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