P1150516s
味の傾向:
軽やかで香り高い酒質の吟醸酒なのに、田舎酒のような苦味・うま味が混ざる新感覚・純米吟醸酒。基本はシャープな甘酢っぱ系の日本酒だが、それだけじゃない新しさを感じる。さすが7号酵母発祥の蔵、見事な新境地である。

おすすめシチュエーション:蔵元の推奨は冷酒と常温。冷酒だとキリッとした酸が楽しめ、常温に近くなると角が取れてまろやかになる。意外に味は食事に溶け込むものではなく、食べ物の味をウォッシュするるタイプ。こってりした食事とか良さそう。とんかつ、生姜焼き、ボンゴレビアンコ、強めのメイン料理に。

評価:80点/100点(新しい吟醸酒の方向性を感じる。オリジナリティ抜群だ)

◆◆◆

今回のお酒は、粒ぞろいの酒蔵が多数ある長野県でも抜群の知名度を誇る、「真澄」をつくる宮坂醸造のお酒「MIYASAKA 美山錦 H29BY」である。これ飲みたかったんだよね~。日本で一番使われている7号酵母発祥の蔵元ということで、もちろんこのお酒も7号酵母で醸されている。ラベルもよーく見ると「7」という数字がデザインされているのがわかるだろうか?

このお酒は真澄とは違うブランドとして2005年に誕生したそうで、2016年にリニューアルしたそうだ。この印象深いラベルもその時からかな?ローマ字のブランド名に外国語解説のQRコードが載る裏ラベルと、このお酒が強く海外市場を意識した商品であることがわかる。新政のNo.6のような、ガス感、酸、香りを活かしたモダンな味かな?というイメージだけど、実際はどうだろうか。


さっそくそそいでみよう(冷酒)。ほおお~、色は若干濃い黄色だ。このお酒は火入れ(加熱殺菌済みということ)のお酒だけど、これだけ色がついているということは、けっこう糖分が残ってるのかも。日本酒度マイナスかな。香りは・・・意外にも油脂だったり、ロウだったり、穀物って感じだったりと、フルーティ系じゃないものだ!わぉ、これは7号の感じ出てますねー。田舎っぽい感じです。でもしっかり吟醸香になっているので、不快感はない。このさじ加減、さすが老練な蔵元だけありますね。

飲んでみる。こ、これは・・・!甘味と酸味のクリアでモダンな味と、うま味、苦味が醸し出す昔ながらのクラシックな日本酒の味が融合している、不思議なライト系吟醸酒だ!これ、凄いな、これ新しいよ。全体としてはシャープな酸味が主体となっているお酒で、キレもアルコール度15%らしい軽やかな感じでシュパッと消える感じだ。口当たりも薄めだけど甘さがしっかりあるから、甘酸っぱさが食欲を誘う。

面白いのが、全体を通して苦味、古酒のような(紹興酒のような)熟成感が存在すること。それがこのお酒に不思議なキャラクターを与えている。ほんと、これ楽しいよ。普通は味の最初から苦味なんてあったらアウトだけど、このMIYASAKAはその苦味をうま味が包んで支えてるんよ。なのでちゃんと苦味は感じるのだけど、嫌じゃないという驚きの味に。この味と、モダンな甘酸っぱさが同居するなんて、凄いな!

例えるなら、新政亜麻猫+神亀純米酒みたいな。もうちょっと意味不明だね(笑)。調べてみたら、日本酒度マイナス、アミノ酸度高め、酸度高めという数値だそうで、なるほど、さもありなんと納得。ここからアミノ酸度を下げると、新政みたいな軽いお酒になるのだけど、このMIYASAKAは高めでこの軽快感をつくってる。いや~、驚きました。美味い!


7号酵母ってスゲェなと実感したお酒だった。と同時に、やっぱり日本酒はつくる人次第だよねってこともまた再認識。素材だけでは日本酒を理解するのは困難なんだよね。このお酒は、風の森や仙禽、加茂錦の荷札酒などが好きな人に飲んでほしいなぁ。ライトな吟醸酒にこういう可能性があるんだって、楽しんでもらえると思うよ。

「MIYASAKA 美山錦 H29BY」、さすが真澄の蔵元と唸らせる実力を持った一本だった。他のシリーズも飲んでみたいぜ!

IMG_0670s
名称
:MIYASAKA 美山錦 H29BY(純米吟醸 一回火入れ)
精米歩合:55%
酒米:長野県産美山錦100% 酵母:真澄酵母(7号酵母)
アルコール度:15.5%
日本酒度:-1.35前後
酸度:2.2 アミノ酸度:1.2
蔵元情報:宮坂醸造 株式会社(長野県
購入価格(税込):1404/720ml
購入日:平成30年3月31日
購入店横浜君嶋屋(神奈川県横浜市)
数値はこちらのページを参照










Twitterやってます。お気軽にフォロミー!
神奈川建一(@KanagawaKenichi) 

お酒ミライのFacebookページはこちら。いいね、もらえると喜びます!

Instagram始めました
神奈川建一