こんにちわー、お酒ミライの神奈川建一です。インフィニット酒スクール・日本酒初級講座、第8回目のレポートです。

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今回と次回は、日本酒の歴史についてです!日本酒は、はるかな昔から日本人と共にあった文化。そりゃー、積もる話もいっぱいあるわけですよ。そんな長い歴史から主要な点をギュッと圧縮してお届け。それではしばしお付き合いくださいませ~。

まず、日本列島にて生まれた最初のお酒はなにか?というテーマがあるんですが、これは恐らくワインだろうと言われています。今より12000年前ごろの縄文時代、山ブドウが潰れて自然発酵し、お酒になったのではないかと。「ワインは勝手にできるが、日本酒は人間がつくらないとできない」という言葉を思い出しますね。


時代はぐーっと下って弥生時代(紀元前500~1000年ごろ)。よーやっと稲作が伝来し、お米の時代がきます!この頃から日本酒の歴史が始まったと思われますが、実は詳細なことはわかってません。かの魏志倭人伝には、「倭人酒を嗜む」などど書かれていますが、その酒がどういう酒なのかはまるでわからないのですね。もしかしたら、お米以外の材料だったのかもしれません。


3世紀~7世紀ごろ(古墳・飛鳥時代)になって、ようやく日本酒の確かな証拠が古事記や日本書紀で確認できるように!やっと昔の日本酒に迫れますぞ。この頃はお酒は神様に捧げるものだったそうで、お酒に関わる神様も多数生まれます。有名な松尾大社や、出雲地方の佐香神社などですね。

ただ、お酒の見た目は今とは全然異なり、ペースト状で固形のものだったり、液体だとしてもかなり濁った濁酒のスタイルだったそうです。今の日本酒のような澄んだお酒はほとんどなく、味も相当ワイルドなものだったのではないでしょうか。お米を使ってるとはいえ、ほぼ別物ですね。


お次は710~794年の奈良時代。ここで麹が中国から伝来します(独自文化説もあり)。ていうか、それまでは麹なしでお酒つくっていたのかよ!ってことですね。古代日本人、根性すげぇ。麹が利用できるようになり、お米を糖化する力が一気に強まります。ここで日本酒の量産化、大衆化の下地ができたと言えるでしょう。


794~1185年の平安時代。この頃には酒づくりが朝廷から寺院に移っていきます。酒飲んじゃいけない坊主が酒つくるの?と言いたくなりますが、これが日本酒の技術力のアップや、量産化のはしりとなるのですから、歴史は面白い。お寺で作られたお酒は「僧坊酒(そうぼうしゅ)」と呼ばれ、高い評価を得ました。麹米と掛米の両方を精米する「諸白(もろはく)」という技術は、この時代の成果です。


そして鎌倉時代(1185~1333年)。ここから大衆文化としての日本酒は始まったと言えましょう。経済が発展し商人が表舞台に出てくると、お酒づくりも彼らの手に渡っていきます。造り酒屋と言われたこの集団は京都を中心に隆盛し、多くの屋号が文献に残ってます。

そして日本酒が大衆化すれば、お約束のように酒で身を持ち崩す武士などが出てきます。今と変わりませんな(笑)。そういう事態に対応するために、日本初の禁酒令が出たのもこの時代です。


武士の世は移り変わって室町時代(1334~1493年)。室町幕府は税収の財源として、酒造りを推奨します。これによってますます日本酒は発展してゆく。僧坊酒も造り酒屋も大きく伸びました。当然技術力も大幅に向上。当時の文献には、乳酸発酵、炭ろ過、火入れによる加熱殺菌、段仕込みなど、現代の酒づくりに直接つながる技術がわんさか登場します。日本酒の基礎ができた時代が室町時代と言えるでしょう。


そしてついに戦国時代!(1493~1600年) まず信長の比叡山焼き討ちに代表される寺院勢力への攻撃は、名声を誇った僧坊酒を零落させていきます。変わって台頭してきたのが、伊丹や池田といった酒郷。そう、今につながる酒の名所が確立されていくのですね。

最後に江戸時代(1600~1867年)です。ここで現代まで続く日本酒の基本が定まります。

「一年間つくっていた日本酒を、寒い時期に一度だけ仕込む寒造りに変更」

「炭ろ過により、澄んだお酒”清酒”が大衆化」

「火入れの一般化により、品質が向上」

「三段仕込みが定着」

「杜氏制度の確立。職人化」

「柱焼酎によるアルコール添加のスタート」

「仕込み水の重要性が認知される。それにより灘五郷が名産地に」

こう見てみると、全部現代に直接つながってますよね。江戸の300年の平和が、日本の歴史に蓄えられていた技術を結晶化したと言っていいのではないでしょうか。


今回はここで一旦終わりです。超簡単にまとめると、「日本酒は平安時代に生まれ、室町時代に基礎ができ、江戸時代で完成した」と言えるでしょう。明治以降もさまざまな技術革新がありますが、日本酒のつくり方の基本は変わりません。僕らが飲んでる現代の日本酒は、江戸時代の子供なのですね。江戸最後の年から数えると、実は200年も経っていない。技術の向上で大幅に味が変わる、日本酒ならではの歴史と言えるのではないでしょうか。

◆◆◆

お次はティスティングです。今回は日本酒の味を決める重要な要素、「ソトロン」について学びますよー。

ソトロンは加熱(火入れ)や熟成で生まれる分質で、お酒が茶色くなるほど増えていきます。これはメイラード反応というもので、簡単に言うとステーキが加熱されて茶色くなるのと同じ反応だとか。古い日本酒は茶色くなりますよね。あれです。

ソトロンが多いと、まず匂いが香ばしくなります。カラメルや醤油、飴のような香りですね。日本酒の古酒や紹興酒を思い浮かべるとわかりやすいかな。味の方は苦味が増えます。日本酒における苦味は、他にはアルコールだったり、コハク酸、無機塩(ミネラル)もつくり出してますが、ソトロンは外見ですぐわかることと、醸造においてコントロールできるところが重要なんだそうです。

今回の試飲はこんなラインアップ。
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①「加茂錦 荷札酒 生詰原酒無ろ過」
精米歩合50% アル度15%
日本酒度:非公開 酸度:非公開
アミノ酸度:非公開 酵母:Kー9

②「三井の寿 山田錦60 パトナージュ」
精米歩合60% アル度15%
日本酒度+2 酸度1.9
アミノ酸度:非公開 酵母:901


③「立山 特別純米」
精米歩合57% アル度16~17%
日本酒度+2 酸度1.3
アミノ酸度:1.3 酵母:9号系


④「菊姫 山廃純米」
精米歩合70% アル度16~17%
日本酒度-3 酸度2.5
アミノ酸度2.5 酵母:自社



今回は①→④の順でソトロン量が増えていきます。ソトロンの影響をきっちり体験しましょう!
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これが実際の色。右に行くほど色が濃くなっているのがわかるでしょうか?

以下、先生のコメントです。

①の加茂錦は、若手で伸び盛りの蔵元。今は人の好むお酒を、他のお酒まねしながらつくってる最中。このお酒は9号酵母を使って、アルコール発酵をアルコール度15%で止めた原酒です(一気に低温にして、失活させる)。9号酵母を使っている理由は、豊富な前例のある9号を使うことにより、経験不足を補うためだとか。

香りはバナナ的な酢酸イソアミル系に、ミルク的なカプロン酸エチルが交じる9号らしい匂い。ソトロンもしっかりあるが、ごく少量。

②の三井の寿は、蔵元で純米吟醸を1ヶ月混ぜ続けて酸化させたもの。うま味が増す代わりに香りが悪くなってしまうそうだ。実際香りはチーズとか雑穀、油脂の香りがバラバラになって匂う。確かにうま味はあるが、苦味とのバランスが良くない。デコボコしてるとのコメント。

③の立山は、57%精米で9号系酵母なので吟醸造りしているのがわかるが、吟醸香が豊富なソトロンの香りにマスキングされている。これは蔵元で1~2年貯蔵しているので、ソトロンがバッチリ増えてる。アミノ酸度1.3でボリューム感を出しているので、ソトロンの苦味も悪く感じない。このお酒は残念ながら必要のない渋みが出ている。これをなくすのが熟成の目的なので、少しアラが目立つとのことです。

④の菊姫は、ソトロンたっぷりの代表銘柄。香りもばっちり雑穀系の匂いがする。加えてスルフィドという硫黄系の匂いもあるが、これはアミノ酸が多い証拠。乳酸の酸っぱい香りもあるが、ソトロンに引っ張られて、チーズっぽい香りに感じられる。味は酸味も苦味も大量にあるが、分厚いアミノ酸によるうま味が受け止めていて、バランスよくまとまっている。濃い料理に合うのはこういうお酒だそうです。


ソトロンは外見ですぐわかる味の要素なので、先生はまずこれを理解することを勧めています。しかし、これが一筋縄でいかなくてですね、今回のティスティングも、ソトロン以外の要素が複雑に絡み合って理解が難しいのなんのって!はー、道のりは遠いです。



番外
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なんと先生が振る舞ってくれた黒龍・二左衛門!

飲んでみましたが、香りが完全に苺でした。なんなんでしょうあれは。常識を超えた香りと味でしたよ・・・。


第9回はこちらです


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