こんなタイプ:冷酒だと飲みにくい味多すぎ系濃厚日本酒。それが熱燗するだけで、ご機嫌なホットラムネジュースに早変わり!真夏に飲んでも冷酒より飲みやすいという、日本酒のマジックを体験できるぞ。
お酒の特徴:「風の森」の蔵元、菩提もと、奈良は変態酒の聖地、酸度・アミノ酸度激高、日本酒度激マイナス、無ろ過生原酒
僕の評価:85点/100点(こんな体験できるのは日本酒だけだろ、そんな風に思わせる逸品)
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今回ご紹介するのは、奈良県の油長酒造がつくる「鷹長(たかちょう) 菩提もと 純米酒」であります。油長酒造というと、フルーティ日本酒党にとっては外せない銘柄・風の森をつくっているところですね。ただし、風の森が「チャーミング」「ビューティフル」だとしたら、鷹長は「ストロング」「熊も殺せそう」って感じですけどね!そのぐらいエキス分多めで、濃厚テイストが鷹長、特にこの菩提もと・純米酒の特徴なのです。
その味の秘密は、お酒の名前にもなっている「菩提もと」という仕込み技術です。平安から室町の間に名を馳せた菩提泉という銘柄をルーツに持つテクニックで、生米を使用するのが特徴なのだそうです。もと(酒母)をつくるときに「そやし水」という乳酸の素みたいなのを入れるのですが、強烈に臭いのだそうです(笑)。しかし、そのかいあって、うま味たっぷりの超濃厚酒が完成するのです。
このお酒も「アルコール度17%、日本酒度-20、酸度2.7、アミノ酸度2.0」という、お前は何と戦っているんだと言いたくなるような特盛スペック。数字だけで超甘くて酸っぱくて濃いってのがわかりますねぇ。これには油長酒造お得意の超硬水による強い発酵力も貢献しているのでしょう。
上記のスペックに加えて、無ろ過生原酒という役満手が揃ったこのお酒、真夏に冷酒で飲むとどうか?クッソしつこくておいしくありません!味が多すぎて飲みづらいったらありゃしない。しかし、これは僕が悪いです。濃厚なお酒を熱帯夜に開けるのがいけないのです。
しかし、開けたからには飲まないといけません。そんな苦悩を抱えながらフェイスブックに書き込んでいると、天からアドバイスが降ってきた。「そのお酒、熱燗にしてみ?」と。
◆日本酒は甘さを温度でコントロールする
半信半疑のまま上燗(45度)に熱して飲んみると・・・う、うまーーーーーーーいいい!!!!これはびっくり、ほんとにうめぇ!
味を説明すると「甘みがぐっと減って分厚い酸味を爽やかに楽しめる、ホットラムネジュース」という表現が一番近いと思います。真夏に気温25度以上の蒸し暑い部屋で飲んでも、冷酒より飲みやすいんです!いや、凄いなこれ、どんな魔法だろう。まず、甘みの感じ方が3分の一ぐらいになります。とってもスッキリ。このお酒は原酒なのですが、アルコール感がキツイ印象から、むしろ涼しげなスーッとするメンソールみたいな感じに変化。これは驚きですよ!
香りは菩提もと由来の強い乳酸の匂いがするのですが、ヨーグルトのようで嫌な感じはありません。いやはや、こんな体験がありうるとは。最も驚くべきことは、気温が暑ければ暑いほどおいしいということ。今年一番の暑さが続いた7月末ぐらいに初めて飲んで、ちょっと熱帯夜が落ち着いた時期にも再度飲んだのですが、前者のほうがおいしかったんですよね。理解を超えてるぜ、このお酒は!!
◆お酒にルールなどない
「日本酒は甘くて飲みにくいから、真夏はワインとかチューハイ飲もうぜー」と日頃から言っている僕ですが、今年はそんな浅はかな考えをぶっ飛ばす日本酒に会いまくりですねぇ。ほんと面白いです、アルコールってやつは。
真夏に熱燗というのは昔からよく聞きましたが、クーラーかけた部屋で飲めばそりゃうまいだろーぐらいにしか思ってませんでした。まさかキンキンに冷えたビール以上の快楽が、夏季の日本酒に眠ってるとは考えたこともありませんでしたよ。やはり常識というルールは信じないほうがいいですね。これはアルコールに限らず、なんにでも言えます。僕も気をつけないと。
「鷹長 菩提もと 純米酒」、この夏一番の贅沢を体験させてくれたお酒でした。冬は冬で別の楽しみも提供してくれるのでしょう。要注目のお酒です!
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