こんにちは~、お酒ミライの神奈川建一です。だいぶ遅れましたが(本当にな!)、インフィニット酒スクール・初級講座第9回レポートをお送りします。今回は前回から引き続き、日本酒の歴史後編です。近代以降のお話となります。
明治維新を実現し近代化に邁進する新生日本、世界各国から科学技術が大量に入ってきます。お酒に関しても微生物学により近代化が飛躍的に進行。当時は国家財政に占める酒税の割合が大きかったこともあって、日本全体の醸造技術の向上を目的として国立醸造試験場が設立されます(明治37年設立)。現在の酒類総合研究所ですね~。
ここで皆さんご存知の「山廃もと」「速醸もと」が開発されます。どちらも江戸時代の製法である「生もと」よりも、重労働の削減、生産期間の短縮を可能としました。また酵母の培養及びその頒布も行われるようになり、以前より安定的に日本酒の生産ができるようになります。
また、明治時代の初期から一升瓶が普及し始め、大正~昭和の時代にはお酒の貯蔵のためにホウロウタンクも利用されるようになります。これらは正確な量の販売、貯蔵を可能とし、日本酒という産業が近代化するのに大きな力となりました。以前の杉樽だと、樽がお酒を吸ってしまい、正確な課税ができないというのも大きな理由だそうです。たしかにこれは課税がやりにくそうです(笑)。
そして一番大きいのが竪型精米機の開発!昭和に開発されたこの機械は、現在の吟醸酒文化をつくりあげた真の主役と言っていいでしょう。人力に頼ることなく安定的に高精白の原料米を生産できるようになったため、香り高い吟醸酒が日常的に飲めるようになったのですね。逆に言うと、精米機のなかった時代は今よりもっと雑味が多く、香りもフルーティさとは無縁でした。ごく短期間の間に、日本酒の味は大幅に変わっているのです。
また酒税法が昭和15年に改正。特級、1級(出品酒扱い)、2級(出品しないお酒)という区分ができたのがこの時です。この制度はだんだん市場のニーズに合わなくなり、平成元年に廃止決定、平成4年に廃止が施行されました。ちなみにこの2級酒で有名になったのが越乃寒梅であり、雪中梅です。
ちなみに昭和48年までは、日本酒には防腐剤(サリチル酸)が添加されていました。日本酒に防腐剤!?と聞くと、うげぇーって感じになりますが、それだけ日本酒業界は「腐る」ということに恐怖を感じていたのでしょうね。加熱されていない生酒が全国流通する今の時代が、どれだけ恵まれているかわかるエピソードと言えましょう。
このように、江戸時代で完成した日本酒という文化は、明治から昭和初期までの期間で近代的な商品に生まれ変わっていきます。江戸時代ではむしろ農産物に近かったものが、明治・大正・昭和の時代を通過するにつれ、工業製品化していったと言えるのではないでしょうね。
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おまけのエピソードとして、皆さん大好き「醸造用アルコール」について!
1700年台に蒸留技術が伝わり、日本での蒸留酒の歴史がスタートします。日本酒に蒸留したアルコールを添加し腐造を防ぐテクニックは江戸時代から行われていたと言われてますが(柱焼酎)、本格的に行われるようになったのは戦中の物資不足を補うために、日本酒を増量するために使われたのが原因とされています。
戦争終わって1955年ごろ、今までサツマイモからつくっていたアルコールを、サトウキビにトウモロコシなどからつくるようになりました。原料変わったから、味も変わったの?と思ってしまうところですが、醸造用アルコールの濃度は99.6%以上!ここまでくると味の変化などはありません(笑)。
日本酒では高純度で輸入されたアルコールを30%ぐらいまで薄めて使用しています。ちなみに薬局で売っている医療用アルコール(無水エタノール)は、酒税払ってない以外は醸造用アルコールと同じなので、3倍に薄めてお酒に混ぜるとアル添ごっこができます。おすすめしませんが!
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それでは今回のティスティングについて。今回は以前より細かくお酒を見ていきます。アミノ酸、酸度、アルコール度の関係などについて理解を深めました。
①「鳳凰美田 純米大吟醸 本生」精米歩合50% アルコール度16~17%日本酒度±0 酸度1.5アミノ酸度:非公開 酵母:自社培養②「福田 純米大吟醸 幸 1回火入れ」精米歩合50% アルコール度16%日本酒度-2 酸度1.7アミノ酸度:非公開 酵母:1401③「冩楽 純米 1回火入れ」精米歩合60% アルコール度16%日本酒度+2 酸度1.4アミノ酸度:非公開 酵母:F701④「七田 七割五分磨き 無濾過 H27BY」精米歩合75% アルコール度17%日本酒度+4.5 酸度1.7アミノ酸度:非公開 酵母:佐賀9号
以下、先生のコメントです。
①は2017年3月出荷で、約1年経っているお酒。ちょうど吟醸感が下がり、熟成感が上がってくる段階になっている。香り・味などから恐らく9号系の酵母を使っていると推測される。甘みたっぷりで後半熟した苦味が感じられるが、酸度1.5もあるわりには、酸っぱさを感じない。これは高めのアミノ酸と16~17%のアルコール度がもたらす甘さ旨さで、酸っぱさが抑えられているせいである。例えばアミノ酸度が1.0なら、酸度1.7ぐらいの印象になるだろう。推測されるアミノ酸度は1.3ぐらい。
②はここ数年で人気の長崎県のお酒。代替わりして28歳ぐらいの新杜氏が切り盛りしている。まずお酒に色がついているが、これは糖度が高い証、つまり日本酒度マイナスということ。香りはシャープな印象があるが、これは高い酸度のせい。このように外見や香りから多くのことがわかる。低い日本酒度(-2)と高い酸度(1.7)はちょうど相殺するような関係になっており、味としてはバランスが取れている。またへばりつくような苦味はコハク酸、長い余韻はアミノ酸が強いため。アミノ酸度は1.2と予想。
③香りはヨーグルト+セメダインで清涼な感じ。味は甘旨があるが酸が強いので、スッキリ感がある。存在する苦味はアルコール由来のもの。この苦味があるせいで、酸っぱいのに余韻が長く感じられる(酸っぱいと余韻は短いのが多い)。酸度1.4なのに酸っぱさが目立つのは、アミノ酸度が低いせい。ちょうど①のお酒と反対の現象が起きている。アミノ酸度は1.0~1.1だろう。
④低精白&高アルコールのお酒。当然のごとく激しい香りになる。痛いぐらいだ。お酒の色は緑がかっており、これはビタミンB2の色。ビタミンB2は精白が低いと多く残る。味は甘旨しっかり、そして後半の苦味が強い。これはソトロン(熟成で発生する成分)とアルコールの苦味のせい。アミノ酸度は1.2だろうか。このお酒は旨味のしっかりした料理に合わせるのがよい。さばの味噌煮とか苦味に負けないものを。
いかがでしたでしょうか。なかなか複雑になってきました。アルコール度、日本酒度、酸度、アミノ酸度は、日本酒の味を構成する重要な数値で、それぞれが相互に関連するので推測の手がかりにもなるが、間違えの原因にもなるのだそうです。
例えば甘みや酸味は、強いとアルコール度を勘違いすることが多いのだそうです。逆に言えば、低アルコールでも満足できるお酒として設計するなら、甘みと酸味は重要ということですね。
例えば甘みや酸味は、強いとアルコール度を勘違いすることが多いのだそうです。逆に言えば、低アルコールでも満足できるお酒として設計するなら、甘みと酸味は重要ということですね。
しかし、香り・色など手がかりは多いとは言え、酵母やアミノ酸度を当てるのは難しいですわぁ・・・。こればかりはトライ&エラーだと先生はおっしゃられていましたが。うーん、そろそろティスティング用に同じグラス複数揃えないとなぁ。道のりは遠いです。
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