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味の傾向:
秋田県産山田錦を使用した試験醸造酒。整った味にするのが難しい等外米を使用して、香り軽やかなドライ系日本酒に仕上げている。等外米特有の欠点はあるが、チャレンジを支える蔵元を応援したくなるお酒だ。

お酒の特徴:試験醸造、秋田を応援したくなる、等外米使用、山田地区でつくった山田錦、W山田、難易度の高い醸造

僕の評価:70点/100点(飲んで楽しむのではなく、飲んで応援するお酒です)

◆◆◆

さー、前回に引き続き秋田のお酒のご紹介です。秋田の友人のおかげで、当ブログの秋田酒カテゴリが記事数最大になりそうですねぇ。ウチの中でも一番人気の記事カテゴリなので、今後も頑張らせていただきます!

今回のお酒は「両関(りょうぜき) 山田地区山田錦仕込み Y H29BY」であります。以前この蔵元から別に発売されている「花邑(はなむら)」をレビューしてますね。両関が元々あったブランドで、花邑は十四代の高木酒造指導のもとつくられた銘柄です。

さてこのお酒、日本酒に詳しい人なら「えー、マジで!?」と思うポイントがあります。それはこのお酒が秋田県産山田錦を使用しているということです。山田錦の産地は兵庫県。秋田県と比べると・・・そう、全然気候が違う!暖かい地方でぬくぬく育つ山田錦は、氷点下マイナス20度が半年続くツンドラ気候の秋田県では芽すら出ないのです(やや誇張あり)。

そんなわけで、秋田県では山田錦の生産はゼロなのです。秋田県産のお米にこだわる新政酒造が山田錦を使ってないのは、そういう事情なんですね。秋田で主力となる酒米は、秋田酒こまち、美山錦、美郷錦、改良信交、吟の精、などとなります。

しかし、そんな山田錦不毛の地・秋田で、山田錦の栽培にチャレンジする農家が出てきたのです。これは応援しないといけないとばかりに、そのお米の使用を申し出たのが両関酒造だったのですね。残念ながら今回のお米は等外米(法律の基準に満たないお米)だったのですが、しっかり買い取ってお酒をつくるその心意気、くーシビれますねぇ!

お酒のスペックを書いておくと、精米歩合50%、アルコール度16%の純米酒です。おそらく吟醸造りしているでしょう。形が不揃いな等外米は、お酒が出来上がると意図してない雑味が生まれてしまうのですが、はたして両関酒造はそこをどうこなしているか?興味深いですよ~。

◆精一杯の頑張りが感じられる味

味は「ほんのりと甘くドライ気味に調整された、後半のシャープな辛さが魅力的なタイプ」でした。なんとなく同じく秋田の美酒の設計にタイプが似てますね(特に後半の辛さとか)。「山田錦、16%、精米歩合50%」と、共通点も多いので意外と設計に類似点があるのかもしれません。で、等外米特有の雑味ですが・・・残念ながら残ってます。余韻に苦みが強く出るのですね。まあ、これはしょうがない!それゆえ繊細な料理には向きません。味の厚い料理がいいんじゃないかな~。

面白いのは、うま味を絞って軽くさせつつも、味の厚さをアルコールで補っているところです。飛良泉35(等外米の秋田酒)もそうですが、等外米はうま味(アミノ酸)を減らすのがセオリーなのかもしれませんね。たぶん予想外の雑味が出るのを防ぐためじゃないかなぁ。うま味成分が減るとお酒の味がペラペラになるのですが、このお酒はアルコール度を16%にすることで甘みなどの増加を狙っている印象です。このアルコール感は味の後半の辛さにもプラスに働いてるので、上手だなぁと感じましたね。

香りは、青っぽいフルーティさはありますがごくわずか。ちゃんと食中で飲んでね!というメッセージでしょうか。日本酒としての方向性はしっかりしてますね。

◆飲みながら応援するということ

じっくり味わいながら感想書いてみましたが、どうでしょうか。ぶっちゃけて言ってしまうと日本酒としては落第点です。苦みが多すぎて料理の邪魔をしてしまうのですね。食中酒として設計されていてこの欠点では、商品としては失格です。

しかし、このお酒は山田錦にチャレンジする農家を支えるためにつくられたものです。味単体の悪さをどうこう言うなんてナンセンスですよ。むしろここまで完成された日本酒に近づけた両関酒造を褒めるべきですし、来年以降の秋田県産山田錦がもっとおいしくなっていくのを楽しみに待つことだってできますよね。

これぞ「お酒のストーリーと味わいで日本酒を楽しむ」というやつでしょう。今の日本酒シーンを支える重要な要素です。僕は正直あまり重視しないのですが(味が全て派)、でもこのお酒については素直に物語を噛み締めながら飲めました。両関GJです!

「両関 山田地区山田錦仕込み Y H29BY」、秋田県産酒米の小さいけど重要な第一歩かもしれません。今のうちに味わってみましょう!

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名称
:両関 山田地区山田錦仕込み Y(H29BY 火入れ 純米酒)
精米歩合:50%
酒米:秋田県産山田錦100%
酵母:自社培養
アルコール度:16%
日本酒度:+2.1
酸度:1.4
アミノ酸度:0.7
蔵元情報:両関酒造 株式会社(秋田県
購入価格(税込):1595円(たぶん)/720ml
購入日:平成30年10月21日(到着日)
購入店:秋田県より直送








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