こんにちは~、お酒ミライの神奈川建一です。今回もインフィニット酒スクールで学んできたことを、簡潔にまとめてレポートしてみたいと思います!



皆さん、「日本酒のおいしさの秘密を知りたければ、蔵元(杜氏)に学んではいけない」と聞いてどう思うでしょうか。えー、そんな馬鹿な!造り手が一番お酒のことを理解しているんでしょ?とは思いませんか。僕はずーっとそう思ってました。

名工の認定を受けいまだに第一線で素晴らしいお酒をつくる方、停滞していた家業をドラスティックに改革して新時代をつくる方、若くして全国新酒鑑評会でいきなり金賞を取る方などなど・・・日本酒がつくり手の技術に大きく依存しているのは間違いなく、それゆえ彼らこそ日本酒の秘密を知っていると考えるのはごく自然だと思います。

しかし、蔵元さん達は自分のつくるお酒については詳しく知ってますが、他の日本酒について、もっと言うと日本酒全体に共通する理論・仕組みについては、実はよくわかってないのです。蔵元の方々は数多くのトライ・アンド・エラーを繰り返し自分の理想の味を追い求めてますが、例えば完璧なお酒が完成した時にどうしてその味になったかを本当の意味では理解していないのです(ごく一部、とんでもない洞察力で包括的な理解に至ってる方もいます)。

これを先生は「杜氏の勉強は川上から川下へ、我々の勉強は川下から川上へ」と説明してくれます。どっちが間違っている・いないではなく、立場が違えば知らないといけないことも変わってくるということです。

では、僕ら消費者が学ばないといけないことはなんでしょうか?それは「私たちがどういうお酒をおいしいと感じるのか」ということです。

どのような甘旨酸苦のバランスのお酒が好ましく感じるのか、どういうアルコール度が食事に最適なのか、どの数値を理解すれば飲まずして好みのお酒にたどり着けるのか・・・おいしいお酒を見つけるための方程式と言ってもいいかもしれません。

もちろんお酒は嗜好品です。どんな味の日本酒でも「これが好きだ!」という人は一定数います。蓼食う虫も好き好きというやつですね。でも、おいしい味の理論・法則がないわけではありません。それがあるからこそ「美味い日本酒」という文化が生まれ育ったのですからね。

先生曰く、おいしい酒というのは「おいしいツボ」を多く持っているお酒のことだそうです。人によって美味さを感じるツボというのは異なりますが、それがたくさん詰まっている日本酒がいいお酒ということですね。10人飲んで3人が美味と思うお酒よりも、7人がおいしいと感じるお酒のほうが優れているという考え方です。

このことを理解できれば、自分の好みでないお酒を「でも、これは良い日本酒」と評価できるようになれるでしょう。いわゆる公平な視点というものを持てるのです。日本酒をレビューするのが好きな僕としては、ぜひとも学びたい知識ですね。いやー、やる気が出ます!頑張ろうっ。



さて、今回のティスティングはこちらです。用意されたお酒は全部「酸度」が同じものとなります。こりゃ、ワクワクする飲み比べですゾ!
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①新政 ラピス2015別誂蔵内熟成
精米歩合 麹米40% 掛米50%
アルコール度 15%
日本酒度 ±0
酸度 1.8
アミノ酸度 0.6
酵母 6号(新政酵母)

②常山 槽場初詰 別誂
精米歩合 麹米50% 掛米60%
アルコール度 16.3%
日本酒度 +2
酸度 1.8
アミノ酸度 1.2
酵母 FK-501&K1901

③播州一献 山廃純米愛山 澱絡み生
精米歩合 65%
アルコール度 16%
日本酒度 +4
酸度 1.8
アミノ酸度 0.9
酵母 K701

④天狗舞 山廃純米
精米歩合 60%
アルコール度 15.9%
日本酒度 +3
酸度 1.8
アミノ酸度 2.0
酵母 自社培養




以下、先生のコメントです。

①の新政は蔵で2年熟成したもの。熟成していても色が薄いのは、アミノ酸度が低い証拠。わずかについてる色は、ほとんど糖分が着色したものである(メイラード反応)。味は甘みと酸味が柱でうま味が少ない、ザ・新政という味。ただ、このお酒は6号酵母由来のコハク酸と熟成によるソトロン(苦い成分)の生成によりかなり苦い。アミノ酸度が高いとうま味で苦みをカバーできるが、新政はそれができないのでなかなか辛い。食事がある程度進んでから飲むお酒だ。

②の常山は新政と同じ酸度1.8だが、アミノ酸度が2倍の1.2あるお酒。うま味がグワッと増えて実にふくよかな味になっている。この精米歩合でアミノ酸度1.2は多いほうだが、酸度のおかげで余韻がキュッと締まっており、とても飲みやすい。好きな人も多いだろう。(僕個人は、同じく福井の黒龍・純米吟醸垂れ口を思い出しました。味が多いけど、飲んでて疲れない!)

③の播州一献はアミノ酸度0.9。この精米歩合(65%)では低い方。飲んでみると案の定、味が乗っていないお酒の典型。余韻が足りず、収斂味がある。まさにドライなお酒だ。アミノ酸が少ない上に酸度1.8なのが強く影響している。日本酒度+4は特に高い数字ではないが、高い酸度と低いアミノ酸度との組み合わせによりこういう味が生まれる。

④の天狗舞は2年熟成のお酒で、アミノ酸度は搾りたての時の数値。なので現在は異なってると思われる(熟成により増えるタイプと減るタイプがあるそうだ)。アミノ酸度2.0という強烈な数字なので、酸度1.8はうま味に埋没する勢い。ここまで高いとうま味成分の一部は苦みに転じている。2年の熟成のうちに、アミノ酸が甘いのから苦いのに変化しているのも影響がある。


いや~、予想していた通り、同じ酸度でもお酒の印象は全く違いますね。読んでいただくとわかるように、アミノ酸度の多い少ないでずいぶん味が変わる印象です。日本酒はいろいろな数値がありますが、どういう組み合わせなのかを知れば、味の傾向を判断できそうですね。

それでは、また次回のレポートでお会いしましょう~。

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