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味の傾向:
控えめな甘さにふくよかな旨味がたっぷりのった旨口日本酒。とはいえ単純にフルボディではなく、味の後半にしっかりとした渋みが出てきて、ボリューム感と軽やかさが同居する不思議な味。

僕の評価:80点/100点(高品質な酒質に個性的な味わいがのっている)

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はい、2018年の後半からレビューが増えまくっている福島酒を、またもやご紹介です。「自然郷(しぜんごう) BIO 特別純米 H30BY」であります。BIOは、ビオではなくバイオと読みます。楽器正宗を醸す大木代吉本店の商品ですね。

福島酒は、どれ飲んでもハイレベルなんですよね・・・。おそらく酒造組合の指導がいいのでしょうねぇ。個人的な印象としては「柔らかな味わい」でしょうか。寫楽や廣戸川はもちろん、楽器正宗や飛露喜のような濃厚なお酒でもサラッとしているんですよ。そういうところが、近くの山形や新潟とは明確に違う気がするんです。東北のお酒は、地域ごとの個性が楽しくて大好きです。

さて、こちらの自然郷ですが、できる限り無添加・無加工でつくるシリーズだそうで、当然ながら全商品純米づくり。ここがほぼ全てのお酒がアル添である楽器正宗との大きな違いですね。醸造用アルコールを使っているかどうかで分けている銘柄というと、青森の田酒/喜久泉を思い出しますね~。

スペックを確認しましょう。「アルコール度16%、精米歩合60%、日本酒度+1、酸度1.7、火入れ、無濾過原酒」とのこと。わりと平均的な数値ですが、ポイントはアルコール度16%なのに原酒というところでしょうか。発酵を失活させて途中で止めていることがわかります。発酵を途中でやめる=糖分が多め、ということですね。それが日本酒度+1にあらわれています。しかし、特段極端な数値ではないので、飲んでみないとわかりませんね。さあ、行ってみましょう。

◆摩訶不思議な渋みは白ワインのよう

味の第一印象は「コッテリ感あるふくよかな旨味に、ほんのりとした甘味が重なる。後半のキレは酸味・苦味に明確な渋みが存在し、白ワインを思わせる」というもの。これは個性的だ。しかし飲みやすい!

香りはそこまでフルーティではないけど、しっかりある。最近の純米ではよくあるパターンですね。そして口当たりが面白い!しっかり糖分の存在が感じられるぐらいトロリとしているのに、一瞬辛口?と思わせるぐらい甘さ控えめなんですね。これは楽しい。どうやって甘さ消しているんだろう?もしあなたが楽器正宗を経験したことがあるのなら、あれから甘味を大幅に減らしたような印象をイメージしていただけると近いと思います。

そして渋み!本当に白ワインみたいなんですよ~。余韻の長い渋さ。ただ旨味の方も最後まではっきり残るので、実に不思議な感触です。ここで苦味が目立たないのもポイントが高い。まあ、これだけ旨味があれば当然ではあるのですが、これが渋みだけをワインのように楽しめる原因なのかもしれません。

これ、めっちゃ面白いけど、料理との組み合わせ悩んじゃいますね~。たぶん、このコッテリさに対して、さっぱりした食事が似合うんじゃないかなぁ。こてっちゃんや油で炒めたものなどと一緒に飲みましたが、そっちはしつこい印象がありました。大根おろしとかレモン煮などで合わせてみたかったですね。

◆個性的だけど万人向き

原酒特有のエキス分の濃さを、控えめな甘さと明確な渋みで楽しめる極めてオリジナリティの高いお酒でした。でも、飲みにくさはないんですよね。このあたりは旨味がいい仕事をしているんだと思います。旨味があれば、極端な飲みにくさは出ないですから。このお酒はアミノ酸度高そうですね。

しかし、さすが福島、お酒の完成度が違います。この前飲んだ辰泉もそうですが、個性的でも飲みにくくなったりしないバランス感覚はさすがです。少なくとも県外に出るお酒は、しっかり選別されている印象ですね~。

今回は楽器正宗と飲み比べしつつ味わったのですが、明確な方向性の違いを感じました。楽器正宗は芳醇甘口、自然郷は芳醇旨口ですね。とはいえ、僕にとってはこのBIOが初めての自然郷だったので、他の自然郷も同じなのか気になるところです。

「自然郷 BIO 特別純米 H30BY」、福島酒はこうじゃなくっちゃ、という期待に見事に答えている個性派日本酒でした。ぜひ一度味わってみるのをおすすめしますよ~。

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名称
:自然郷 BIO 特別純米 H30BY(無ろ過原酒 火入れ)
精米歩合:60%
酒米:夢の香
酵母:不明
アルコール度:16%
日本酒度:+1
酸度:1.7
アミノ酸度:不明
蔵元情報:合名会社 大木代吉本店(福島県
購入価格(税込):1440/720ml