新政「２０１９年頒布会　エクリュ」旨みたっぷりの新政らしくない新政！ : 神奈川健一のお酒ブログ

味の傾向：新政頒布会の１本、「生米麹」という極めて特異な醸造方法でつくられたお酒。新政らしからぬ旨味があり、甘酸っぱいイメージは皆無だ。冷酒より常温、ぬる燗が美味なんだから驚く。いろいろな点で普通の日本酒と異なり、不思議な気分にさせてくれるぞ。

僕の評価：７５点/１００点（味が新しすぎて戸惑ってます）

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はい、今回から２０１９年度新政頒布会の６本をご紹介していきます。まずは新政のベーシックラインとも言えるカラーズシリーズの特別醸造酒「新政（あらまさ）　２０１９年頒布会　エクリュ」であります。パチパチパチ～！

新政の頒布会は毎年春ぐらいに販売される商品で、毎月２本づつ計６本頒布されるセット商品です。ここでしか飲めない限定醸造の新政が手に入るということで毎年大人気ですが、年を追うごとに佐藤社長のマッドサイエンス実験場としての性格が強くなっており、ファンは泣きながら奇妙キテレツなお酒を飲み続けることとなります。新政ファンのマゾ性が試される商品と言えましょう。

今回のエクリュは、通常版では「純米酒、火入れ、酒こまち、６号酵母、原酒」の組み合わせでつくられるお酒で、新政で一番安くて入手しやすい定番酒です。もちろん僕も大好きな１本で、このブログでもレビューしていますね。

この頒布会のエクリュは、基本の仕様はそのままに「生米麹」という数千年前の日本酒の作り方を応用したド変態酒だそうです（公式の解説書より）。もちろん僕には何がすごいのか全然わかりません！「わー、とんでもなさそー（棒）」という感じで、ＩＱ５ぐらに知能指数が下がった頭で解説を読みました！

さてスペックですが、レギュラーの新政と違いこちらは詳細に書いてあるので嬉しいですね。

アルコール度　１４．７％

精米歩合　６５％

日本酒度　±０

酸度　１．７

アミノ酸度　１．２

純米、火入れ、原酒

ぱっと目を引くのはアミノ酸度１．２でしょう。新政と言えば低アミノ酸度がトレードマークでして、通常の商品は０．８や０．７、ものによっては０．６という非常に低い数値が基本です。これがあの甘酸っぱい味わいのもとなんですね。それを前提にすると、このお酒の１．２は非常に高いと言っていいでしょう。まあ、他の蔵元のお酒ではこれぐらいの数値はよくあるんですけど。

とりあえず、飲んでみましょう～。

◆味が新しすぎて理解が追いつかない

味の第一印象（冷酒）は「口当たりの酸味がコーラみたい」というもの。なんのこっちゃ？でしょ。めちゃくちゃ伝わりづらいと思うんだけど、僕の感じた違和感を伝えるのならこれしかないんです！

上に書いた通り最初から酸味があるのだけど、じゃあ新政らしく甘みがあるのかというとちょっとしかない。かわりに目立つのが旨み！これが実にもっさりしていて新政らしいシャープさを損なっているのです。しかもフィニッシュにはコハク酸（温めるとおいしい酸）と思われる苦味が。全然新政らしくね～。香りはきちっと新政バナナなのですが。

じゃ、おいしくないのかというと、そうじゃないのが悩ましいところ。不思議と飲めるんです。ただ、どう楽しめばいいのかわからないし、さらにどういう食事に合わせればいいのかもわからない！

ちなみに蔵元のおすすめ温度帯は常温～ぬる燗でして確かにいい。常温だと香りはいまいちですが、お米のエキス感ありつつも軽くて飲みやすい。苦味が多いのだけど嫌じゃない苦味ですね。王祿みたいな。ぬる燗だともっとよくて、酸味はレモンみたいになり、苦味は消えます。こっちはかなりおすすめですね。

◆天才の頭は凡人には理解できないもの

とにかく新感覚すぎるお酒でした・・・新政の味を前提としているがゆえの新感覚なのかもしれませんが、普通のお酒っぽさは微塵もないです。甘み・旨み・酸味・苦みのバランスがいままでの日本酒と違うんですよね。現状の流行より１歩も２歩も先を行っている感じです。これが未来の主流になるかどうかは全く未知数ですが。

農口さんのヌーボーもそうでしたが、天才が考える新しい味というのは、凡人にはすぐには理解できないですね。新政も最初のお酒はいろいろネガティブな意見を言われたそうですし、もっとさかのぼれば淡麗辛口も当初は全く地元新潟では受け入れられなかったらしいです。せいぜい僕らが理解できるのは半歩先の味わいなのでしょう。味覚というのは非常に保守的なものなのです。

「新政　２０１９頒布会　エクリュ」、未来へタイムスリップできる面白いお酒です。さあ、あなたはどのように感じますか？