
こんにちは~、お酒ミライの神奈川建一です。今回もインフィニット酒スクールの講義レポート、いきますよッ。
前回のレポートはこちらをどうぞ!
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第5回目の今回は酵母についてです。定番の協会酵母に加えて、M310やCel-24、熊本酵母に山形酵母などバリエーション豊かな清酒用酵母。商品名になっている場合もあり、蔵元もアピールする機会の多い酵母ですが、僕ら消費者はどうとらえていくべきかということを学びました。
結論から書くと「酵母の違いはたいして意味がない」です。より詳しく書くなら「酵母の違いよりも、杜氏がどういうスペック(アルコール度、日本酒度、酸度、アミノ酸度)で仕込むか、出来上がったお酒をどう後処理するか(火入れ、炭ろ過、熟成、加水、アル添)の方がはるかに重要である」ということです。先生は「酵母はわりとロマンだよね」とおっしゃっていました。
僕はこの話を聞いて「酒米に似ているなぁ」と思いました。酒米も酵母も、間違いなく杜氏にとって極めて重要な材料でしょう。でも僕ら消費者にとってはそこまで重視するものではなく、スペックや後処理の理解の方がより日本酒を知るために役立つのです。これは生産者と消費者が学ぶべき知識は非対称である、という事の典型例でしょう。
先生が挙げた例はこんな感じです。どちらのお酒も吟醸造りをするとします。
①アルコール度15% 日本酒度±0 酸度1.8 アミノ酸度0.9 9号酵母 生酒
②アルコール度15% 日本酒度±0 酸度1.0 アミノ酸度1.2 9号酵母 火入れ
9号酵母はリンゴの香りと言われるカプロン酸エチルを出す酵母です。糖分の量(日本酒度)が同じでアルコール度も一緒なので、基本的にどちらも同量のカプロン酸エチルが香るはずです。しかし、この2つはまるで違う香りになるのです。
理由は酸度の違いと火入れの有無です(つまり、スペックと後処理が異なる)。①は酸度が高く生酒なので、乳酸の匂いとアセトアルデヒドの匂いが強いです。この2つの香りはもう1つの吟醸香である酢酸イソアミルの匂いを強化するのです(正確には人が酢酸イソアミルを感じやすくする)。酢酸イソアミルは吟醸づくりすると必ず出る香りで、①も②にも存在しています。しかし、①のお酒は以上の理由により、より酢酸イソアミルを強く感じるお酒になるのです。
酵母が同じでもスペックと後処理が変わることで全然印象の違うお酒になるのですね。つまり酵母だけわかっても味や香りはほとんど推測不能なのです。あの香り高い1801酵母も全然匂いがない商品があるそうですよ(炭ろ過と熟成を行っているそうです)。
このように僕ら消費者にとって酵母は、知っておいたほうが理解に役立つが最重視するものではなく、優先すべきはお酒の成分であるスペックと後処理だということです。いやーなるほど、そう考えるべきなんですね~。
最後に各種酵母について聞いた豆知識です。基本的な知識はWikipediaが詳しいので、そちらを参考にしてください。
6号酵母:「深みがでる」と言われているが、これは「苦い」ということ(コハク酸)。ここから考えると、新政は6号の味を出し切ってないということである(新政は苦くない)。
7号酵母:吟醸系酵母の元祖。しかし、今の酵母は9号、10号から進化したものが多く、7号直系は少ない。
9号酵母:熊本酵母と呼ばれたりするが、実はそれぞれ別の酵母らしい。9号自体もイソ寄りの9号や、カプ寄りの9号があったりする。9号で吟醸酒をつくるようになったので、7号は使われなくなっていった。
10号酵母:これは7号とは別系統の酵母。派生のM310は明利水戸の略である。M310はほぼ10号だが酸をよりつくれるのが特徴。加水せずに酸味を高められるので原酒に向いている。
14号酵母:ちょっぴりカプを出すイソ系酵母。醸し人九平次のメイン酵母として有名。酸が少ないと言われるが、それは昔の話。
18号酵母:9号の3倍ぐらいカプロン酸エチルを出す酵母。酢酸イソアミルもたくさん出る。
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①風の森 ALPHA TYPE-1 生精米歩合 65%アルコール度 14%日本酒度 不明酸度 不明アミノ酸度 不明酵母 K-7(協会7号)②紀土 無量山 純米吟醸精米歩合 50%アルコール度 15.5%日本酒度 +2.5酸度 1.6アミノ酸度 0.7酵母 K-901(協会9号)③くどき上手 純米吟醸精米歩合 50%アルコール度 16~17%日本酒度 ±0酸度 1.2アミノ酸度 1.0酵母 K-10(協会10号)④醸し人九平次 純米大吟醸 山田錦精米歩合 50%アルコール度 16%日本酒度 不明酸度 不明アミノ酸度 不明酵母 K-1401(協会14号)⑤福小町 純米吟醸 生精米歩合 55%アルコール度 16.5%日本酒度 +5酸度 1.5アミノ酸度 1.4酵母 K-1801(協会18号酵母)
①の風の森は7号酵母で吟醸造りする珍しい蔵のお酒。これは超硬水を処理するためにもろみを選ばない7号酵母の発酵力が必要なため。吟醸香である酢酸イソアミルは出ているが多くはなく、むしろアセトアルデヒドや酢酸エチル、高級アルコールの清涼感でフレッシュさを演出している。味わいには硬水特有の苦味(マグネシウム)がある。
②の紀土は最近出た新商品。9号を使っているがカプロン酸エチルが出せないスペックなので(糖分とアミノ酸が少ない)酢酸イソアミル系の香りになっている。9号だからってカプが出るわけではない例。味わいは紀土らしく加水が多いタイプ。酸が立っているので爽やかではあるが滑らかなお酒とは言えない。先生としては評価しないお酒。
③のくどき上手は10号酵母使用。カプロン酸エチルも酢酸イソアミルもたっぷり出ている。酸度が低めだがこれは10号のせいではなく杜氏がそうつくったから。アルコール度が高く味わいにボリュームがある。アミノ酸度がちょうどよく低いので余韻がスッと消えていく。1.2だとベタッとした印象になるだろう。
④の醸し人九平次は14号酵母使用。特徴どおりイソベースのちょいカプみたいな香り。ただどれもそうではなく、humanなどはカプロン酸エチルがよく出ている。酸が出ない酵母だが今は醸造技術のおかげで問題ない。コハク酸が出るので、出にくい9号、18号と差がある。苦いのだ。
⑤の福小町は18号酵母。特徴である強いカプロン酸が出ているが、そこにソトロン(熟成香)が混じり印象が悪くなっている。もったいない。アミノ酸が高すぎて悪くなった例。市場に流れる間にどんどんソトロンが増えたのかもしれない。
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レポートはここまで。いかがでしたでしょうか。
酵母は酒蔵がアピールする機会が多い分、僕ら消費者としては「重要なんだ!」と思いがちですが、ちょっと違うよというお話でした。
とはいえ、カプロン酸エチルが出る酵母は決まっていたりしますし、リンゴ酸をたくさんつくる酵母もあるので全然無視するのもよくないという、なかなか扱いの難しい要素だなぁと感じました。まだまだ精進が必要そうですね。
また次のレポートでお会いしましょう~。
次回のレポートはこちらです。
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コメント
コメント一覧 (2)
アセトアルデヒドの香りの過多は生酒では変化しません。
おそらくイソバレルアルデヒド(生老ね香)とおもわれます。
マジですか!調べてみます!