今回はインフィニット酒スクールの日本酒中級講座第6回のレポートをお届けしますよ〜。
前回の第5回レポートはこちらです。
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さて、前回に引き続き酵母の話になります。今回はさまざまな地方酵母についてです。
これからかなりの数の酵母を紹介します。そんなたくさん覚えてられねーよッ!とキレちゃうかもしれませんが大丈夫。僕ら消費者はシンプルに捉えればよいのです。
まず、全部の酵母に共通する大前提は
・どんな酵母もイソベースである。吟醸造りすれば必ず酢酸イソアミルが出てくる。
・そこにカプロン酸エチルが乗るかどうかの差異がある。カプロン酸エチルが出る酵母は決まっており、出ない酵母でいくら頑張っても出ない。
・この2つの香りのトーンの違い(強いか弱いか)があり、それが酵母の個性となる。
この3つになります。簡単でしょ。これで僕らは全部の酵母を判断することができます。
もちろん発酵力が強いかどうか、酸を出すかどうかという区別もあるのですが、それは作り手側が理解すべき特徴であり、僕ら消費者が知ってもあまり意味がないものです。実際、酸の量などは杜氏の腕次第でなんとかなる時代になっており、酸が出にくい酵母を使って酸味豊かなお酒をつくることは可能なのです。
そして、なによりお酒のスペック(日本酒度、酸度、アミノ酸度、アルコール度)が味わいを決めます。これに比べれば酵母の違いなど微々たるものです。なので、この酵母はこの香り・・・みたいな断言はできないので要注意ですよ。先生は「必ずスペックを見ながらティスティングすること!」と口を酸っぱくおっしゃられます。
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それでは代表的な地方酵母を紹介していきます。
秋田
有名なのは協会15号酵母として頒布されているAK-1だが、これは今はほぼ使われていない。人気があるのは秋田新酵母No.12(イソ系)とNo.15(カプ系)の2つ。
AK-1が使われていないのは時代に合ってないためである。酸が出にくくカプロン酸エチルも出ていないので、今の時代的にはバランスが悪い。
宮城
基本イソベースの酵母が頒布されている。わずかにカプがある程度。中心となっているのは宮城マイ酵母。これに宮城産の米を使ってお酒をつくることに取り組んでる。実は協会14号にそっくり。
山形
情報が少ない県。カプメインのイソ系が中心で、酸もほどほど。よく使われる協会10号は酸が少ないので、使い分けている感じ。この県は基本カプロン酸エチルが出る酵母を使う。
福島
うつくしま夢酵母が中心。これを使ってオール福島で酒づくりをしている。カプはそんなに多くないタイプ。
他にTM-1(イソ系)、煌(イソ系のちょいカプ)がある。
群馬
群馬KAZE酵母がある。通常の2倍のカプロン酸エチルが出るとうたわれているが、実はイソ系の酵母である。
栃木
T-F(カプ系)T-S(イソ系)ND(NEW-δ)(イソ系)。
NDはクラシック仙禽の酵母。モダン仙禽は1701を使用している。
茨城
とても有名なのがM310。茨城のどの蔵もM310を使って1つは商品をつくっている。協会10号酵母とほぼ同じだが、酸が少し多く出る。
静岡
全部イソ系酵母である。わかりやすい。HD-1やNO-2など。New-5はイソ系だがちょっとカプが出る。
長野
アルプス酵母が有名だったが、誤廃棄という事故により全滅。消滅してしまった。
今は長野A、長野B、長野Cという酵母が開発されている。
福井
協会14号から生まれたFKシリーズが有名。香りはない。少しカプが出る。
FK-801C、FK-802を新開発してテスト中。イソ系のカプというタイプらしい。
高知
A-14はイソ系、CEL-19、CEL-24はカプ系。AC17はカプイソ。CKは弱いカプ。これは「南」がよく使う。
佐賀
SAGA9は9号酵母の佐賀県版。七田などがよく使う。
三重
MKシリーズがある。MK-1は9号酵母風。MK-5はイソ寄り。
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それでは今日のテイスティングです。全て地方酵母か自社酵母になっています。
①宮寒梅 純米吟醸精米歩合 45%アルコール度 16~17%日本酒度 +3酸度 1.5アミノ酸度 不明酵母 宮城B3②クラシック仙禽 雄町 無ろ過原酒精米歩合 40%&50%アルコール度 15%日本酒度 -2酸度 2.3アミノ酸度 不明酵母 NEW-δ③黒龍 純吟 三十八号精米歩合 50%&55%アルコール度 16%日本酒度 +5酸度 1.2アミノ酸度 1.1酵母 自社(KZ1からの分離)④南 純米吟醸精米歩合 50%アルコール度 17%日本酒度 +7酸度 1.8アミノ酸度 1.0酵母 高知CK⑤七田 七割五分磨き 無ろ過 H28BY精米歩合 75%アルコール度 17%日本酒度 +2酸度 2.4アミノ酸度 不明酵母 佐賀9号(SAGA9)
以下、先生のコメントです。
①の宮寒梅は少しカプ系の宮城B3酵母を使用。確かにカプロン酸エチルはあるが強くはない。アルコール度が高めなので凝縮感が出ていてパイナップルのよう。味わいはアルコール度が高いのに驚くほど優しい。刺激がありえないほど少ない。これはすごいお酒だ。
②の仙禽は栃木のイソ系NEW-δを使用している。バナナ系の香りがまろやかに表現されている。お酒に色があまり付いていないので、ヤブタで絞ってすぐ瓶詰めして一回火入れを行っている。味わいは甘酸っぱい。味の後半に舌に残る苦味があり、これはコハク酸。この味はない方が良い。このままだと繊細な料理には合わない。
③の黒龍は自社酵母。酢酸イソアミル系の香りはザ・黒龍とも言うべき香り。半年ぐらい熟成している。甘旨をアルコールのボリューム感で出している。ポイントは酸度とアミノ酸度の低さ。酸度が低いのでアミノ酸度が低くても非常に滑らかに感じる。酵母活性を抑えて酸を出さない造りの賜物。
④の南は高知酵母のCKを使用。香りは穀物感がある感じだが、しっかりカプもイソもある。酵母特性がよく出てる。味わいは強め濃いめ、酸味と苦味が目立つ高知の酒飲みが好きそうな味。ステーキと合わせてもOKな強さ。コカ・コーラと同じ刺激だ。
⑤の七田は佐賀9号を使用。吟醸造りしているので、9号らしくイソベースのカプがある。生臭いの一歩手前の香り(ジアセチル直前)。熟成感とフレッシュ感が同時に出ている生熟である。味わいは甘い・旨い・酸っぱい・苦いが全部ごちゃまぜ。飲みごたえがある。
以上になります~。
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前回から引き続きの酵母の話、いかがでしたでしょうか。地方酵母、自社酵母まで入れると膨大な数がある清酒用酵母ですが、僕ら消費者はシンプルな切り口で酵母の特徴の一部を理解すればよいというお話でした。
正直、地方酵母のテキスト打っていて、なにがなんだかわからんなと思いました(笑)。酵母に関しては、スペックや後処理への理解が深まってきたら、意識してみる程度でいいかなと感じます。もちろん知ると楽しい知識ではあるんですけどね~。
それでは、また次回のレポートでお会いしましょう。
次回はこちら!
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