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味の傾向:山田錦を利用したアルコール度15%の純米吟醸という、ド定番のスタイルでつくられた日本酒。やわらかでフルーティな香りと、ほどよく甘酸っぱい味わいは、今の日本酒のスタンダードと言えそう。素直においしい食中酒だ。

僕の評価:70点/100点(今どきの味わいを丁寧につくっている)

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今回は当ブログ初めての銘柄を飲んでみます。奈良県の「みむろ杉(みむろすぎ) 純米吟醸 山田錦 H30BY」であります。ここのお酒は飲んでみたかったんですよ~。

奈良県と言うと日本酒発祥の地を自認するだけあって、へんたい個性的な蔵元が多いと感じられます。風の森とか花巴とか睡龍とか百楽門とか、うちでレビューしてきたお酒はどれも一筋縄ではいきませんでしたね。

そんな魑魅魍魎が跋扈する奈良県にあっても、みむろ杉は派手さよりも堅実感あふれるラインナップを揃えているみたいです。ネットで調べてみても15~16%のアルコール度数が中心で、無ろ過生原酒であってもそのぐらいにおさめているあたり、奥ゆかしい蔵元さんだな~と思いました。まるで福島か山形のメーカーみたいな印象です。

今回のお酒は、山田錦を使った15%の純米吟醸です。直球ど真ん中ストレートみたいな1本ですね。今の日本酒シーンの定番中の定番でしょう。寿司ならマグロ中トロ、おでんなら大根といったところですよ。これで蔵元の実力の全てがわかると言って過言ではないです!(過言です)

さて、スペックを確認しましょう。酒屋さんのHPに詳しい数値があったので、引用します。

アルコール度 15.5%
精米歩合 60%
日本酒度 +3
酸度 1.8
アミノ酸度 不明
火入れ、純米 吟醸づくり、加水あり

これ以上ないぐらい今風のスペックですね~。特徴と言うとわりと酸度高めで日本酒度もちょっと糖分多め寄りなので、甘酸っぱい印象をつくっているだろうなと想像できます。ここでアミノ酸度がわかると、より一層推測しやすいんですけどね。でも、甘酸っぱさを活かすならアミノ酸度はやや低めでしょう(0.9~1.0ぐらい)。そこは飲んでみて確認しようと思います。

◆味わいは強すぎず弱すぎず、バランスが肝要

味わいの第一印象(冷酒)は「甘さも酸味も苦味も香りも、全てがほどほど、全てが中庸」というもの。この奥ゆかしい感じ、飲む前の印象そのまんまですね~。外見と中身がともなっているお酒、好きですよぉ。

香りはしっかりフルーティ、りんごもバナナもバランスよく混ざった感じですね。そして生酒のような青草っぽい香りもあります。おお、火入れでも残しているタイプですね。瓶火入れなのでしょう。お酒の色はほんのり黄色。ここも中庸な感じですね。ほどほど、ほどほど。

味わいは、やはり甘さと酸味が組み合わさる甘酸っぱいタイプ。しかし極端さはありません。味の後半に苦味があるけどこちらもほんのりという印象です。いやぁ、ここまで主張しないように、それでも地味になりすぎないようにと整えられているのには感心です。こういうお酒はアルコール度15%台が似合いますね。

予想通り料理には馴染みやすく、素材を選ばない感じです。甘さが食事に寄り添い、酸味や苦味がアクセントになる。ワインのよさを取り入れた現代日本酒の特徴がしっかり出ていますねー。

◆個性はあるべきか、ないべきか

ブランドイメージそのままの、落ち着いたモダン系脇役酒でした~。どこへ持っていっても恥ずかしくない食中酒と言えそうですね。

ただ、個性的かと言われると困りますね。他の銘柄でも似たお酒はたくさんありそうで、みむろ杉じゃないと!というものがなかったです。ブラインドで飲んだらまずわからないタイプです。

別にお酒が個性的な必要はないと思っています。食中酒は特にそうですから。しかし、酸を上手に使ったモダン系日本酒には、どーしても個性を求めたくなっちゃう自分がいます。もっと驚かせてくれぇ!という期待を持っちゃうんですね。そういう意味では残念なお酒だったと言えます。

「みむろ杉 純米吟醸 山田錦 H30BY」、丁寧なつくりの食中酒です。この個性のなさをどうとらえるかはあなた次第です。