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味の傾向:
菊水がつくるスッキリ辛口な吟醸酒。いわゆる新潟のお酒でありがちなタイプのお酒であり蔵元もそれを狙っている。しかし、それでも菊水らしさがハミ出ていてそこがファンには楽しいところではないだろうか。入手しやすさと美しい専用ボトルも長所。

僕の評価:70点/100点(典型的な淡麗辛口だけど荒々しい感じがポイント)

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はい、新潟のお酒大好き!な神奈川建一です。今日ご紹介するのは「菊水(きくすい) 無冠帝」です。「むかんてい」と読みますよ。あの新潟の大手酒蔵である菊水が出す、醸造用アルコール添加の生詰吟醸酒であります。

このお酒は僕が日本酒好きになり始めた頃からあって、ずいぶん商品ラインアップが変わったりしています。確か昔は大吟醸とかもあったような。紆余曲折あって、この吟醸1本のみの商品構成になったようですね。

値段や醸造スタイルを見るからに、新潟淡麗辛口酒の主役である「久保田 千寿」や「八海山 特別本醸造」がライバルであろう製品です。新潟の主力酒蔵として、アイツらには負けてられないぜぇ!という菊水の鼻息が聞こえてきそうですね。

さて、スペックです。今回も酒屋さん経由で数値が見つかったので、それを掲載してみます。

アルコール度 15%
精米歩合 55%
日本酒度 +5
酸度 1.2
アミノ酸度 不明
吟醸づくり、火入れ(生詰)、加水あり、アル添

ザ・淡麗辛口!みたいなスペックですね~。まあ、新潟流の辛口は活性炭によるろ過が重要なのでこの数値だけではわからないのですが、低めの酸度とかが淡麗辛口をイメージさせます。こうなると飲んで確かめるしかありません。さっそく体験してみましょう!

◆基本はスッキリ、でもワイルドな面もあり

味の第一印象(冷酒)は「淡い甘さの後にガツンと辛さがくる!そんな典型的な味わいに混ざる尖った酸味と苦味がアクセント」というもの。あ~、やはりこの味好きです。誰もがイメージする淡麗辛口だけど、ちょっと様子が違うぞ?という感じ。

吟醸酒だけど炭素ろ過しているのでフルーティな香りはほぼなしです。よーく嗅ぐとミルクのような匂いがあるので、これが吟醸香のなごりですねぇ。正直もったいないなぁと思うのですが、ここまでしても水のようにじゃんじゃん飲める酒質を求めたいのでしょう。お酒の色もほぼ透明です。

口当たりはほんのりとした甘さに十分な滑らかさ、その後酸味と苦味がぐっと強くなり辛口の印象をつくり派手にキレる!という淡麗辛口らしい味わいです。が、酸味と苦味が甘さより地味に目立っており、よく言えば荒々しい、悪く言えば雑味感あるテイストとなっています。

あー、これが菊水らしさかもしれませんね。八海山や久保田は綺麗なんですが綺麗すぎるとも言えるので、そこが物足りない人には好まれそうです。焼酎では雑味感って聞いたことありますが、日本酒だとあまりないですね(穀物感とかかな?)。無冠帝では、このワイルドな感じを好きかどうかが評価の分かれ目でしょう。

◆小さな違いが大きな違い

菊水なりの淡麗辛口日本酒が無冠帝でしたね。上に書いたテイスティングのコメントを読んでいただけばわかると思いますが、典型的な淡麗辛口の味であり久保田や八海山とは言うほどの差はありません。重箱の隅を突くようなレベルです。でも、それが商品を選ぶ理由になるのだから、人間の嗜好は面白いですね~。

僕はタバコを吸わないのですが、コンビニに並ぶ無数のタバコパッケージを見て、どれほど味に差があるのか知りたいなぁと思っています。おそらくほんのちょっとの差しかない商品もあるのでしょう。しかし、その差が好き嫌いを生み、商品のバリエーションが増える理由になっているんですよね。実に人間って興味深いです。

「菊水 無冠帝」、淡麗辛口好きなら他の新潟のお酒と飲み比べながら楽しんで欲しい1本です。その味わいの差から、あなたは何を感じますか?