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味の傾向:
2月に搾ったお酒を生のまま11月まで寝かせて出荷した純米大吟醸酒。生酒のフレッシュ感と熟成酒のコク・苦味が同居する不思議なお酒。基本甘口でそこに強めの酸味がのってくる味わいだが、苦味やアルコール刺激の影響で単純な甘酸っぱいテイストになっていない。凝ったお酒だ。

僕の評価:70点/100点(おいしいけど、大吟醸でつくるにはもったいないかなーと)

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どもー、寒い日が続きますが、そういう時は雪国のお酒を飲むべし!というわけで、「天の戸(あまのと) 夏田冬蔵 純米大吟醸 美郷錦 生酒 H30BY」のご紹介です。もちろん、我がブログの秋田酒のほぼ全てを供給してくれる秋田の友人からいただいたものです。さんきゅー!

「なつたふゆぞう」と読むこのお酒はどうやら地域限定のお酒らしくて、秋田県中心に流通しているそうです。浅舞酒造のメイン銘柄である天の戸は、僕が昔にドンキで買ったことがあるぐらい関東ではメジャーですが、確かにこのお酒は見かけたことがないですね~。

かなりハイエンド価格帯のブランドらしくて、このお酒も40%精米の純米大吟醸でお値段4合2750円!貧乏ブログにあるまじき高級品ですわ。普段ならスルーしちゃうお酒が飲めるのも、友人に選んでもらう楽しさですね。

さて、スペックです。今回は酒屋さんに詳細な数値があったので引用してみます。

アルコール度 16%
精米歩合 40%
日本酒度 +2
酸度 1.6
アミノ酸度 1.0
吟醸づくり、加水あり、純米、生酒、9ヶ月熟成

ポイントは精米歩合の高さと甘酸っぱさを想像させる数値でしょうか。精米歩合が40%までくると、高精白のお酒ならではの綺麗な味を期待しちゃいます。数値は日本酒度が低い(=糖分が多い)、酸度が高め、アミノ酸度が低めなので、新政ほどではないけど甘くて酸っぱいテイストがイメージできますね。

ただ、生酒の熟成、いわゆる生熟がどう影響を与えるかが未知数です。もう、飲んでみて確認するしかないですね!

◆相反する要素が同居する複雑な味わい

味の第一印象(冷酒)は「メンソールのような爽やか~な香りと、刺激感ある甘さと、コクのある苦味が混ざり合う不思議なお酒」というもの。あわわ、ものの見事いろんな要素が集結しています!

お酒の色は黄色に緑色が混ざった感じです。熟成の色と生酒の色が混在してますね。香りも混ざっている!フルーティな匂いに、青草っぽい香りとシロップのような香りがギュッと集まっている。いかにも生熟ですね~。

味わいも生酒の部分と熟成酒の部分が合体したような感じです。かなり甘くて糖分以外の甘さの要素も多そう(アルコールとアミノ酸)。これで酸味が高いので甘酸っぱくなりそうですが、それを熟成酒特有の苦味が阻止している感じ。これがコクを生んでいて、複雑感を演出してますね。高い酸度と合わさって、後味は辛口みたいなカーっとくる印象もあります。

新酒みたいな生酒に多いピリピリした刺激も健在です。生酒の要素が多く残っていて、ずいぶんと丁寧に熟成させている印象ですね。手間がかかっているのがよくわかります。ただ、味の要素が多いので、40%の高精白からくるすっきり感や滑らかさは感じにくいですね。飲んだ感じ50~60%精米に感じられます。

◆高級酒としてはちょっと残念

味の要素が多い、じっくり味わって飲むと楽しいお酒でした~。これだけ複雑だと、シンプルな肴でお酒主役にして飲むほうが楽しめそうですね。ペアリングはまったく思いつきません!(笑) どんなのがいいんでしょうかねぇ。

ただ、この味わい、40%精米の純米大吟醸でやらなくてもいいかなーと思います。理由は高精白のよさが消えてしまっているからです。熟成の苦味や生酒の香りは50%の純米吟醸でも同じですから、ここまで高コストのお酒でやる意義がいまいちわからなかったですね。朝日鷹の生貯蔵でも書きましたが、僕としてはいいお酒であるほど生酒の香りや熟成の苦味は邪魔になると思っています。


「天の戸 夏田冬蔵 純米大吟醸 美郷錦 生酒 H30BY」、コストと味わいのバランスにちょっと難ありのお酒でした。味そのものはよかったので残念です。