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味の傾向:
あの千寿を純米酒化した新商品。香りは爽やかに、味わいも酸味豊かでドライな印象に変わっている。特に口当たりから飲み込むまでの味わいの変化が柔らかで自然だ。アル添にありがちな強いアルコール感が苦手な人にもおすすめな淡麗辛口酒である。

僕の評価:75点/100点(好みの問題でこの点。好きな人はもっと上がるでしょう)

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連続で新潟の久保田をご紹介。「久保田(くぼた) 千寿 純米吟醸 R1BY」です。久保田・純米大吟醸に続いてリリースされた久保田のレギュラー商品です。最近攻めてますね~。

こちらは飲食店先行販売という但し書きが付いているお酒なのですが、最近は普通に店頭で買えます。飲食店の注文を優先して売って、残ったら一般消費者に回すという意味なんでしょうか?ちゃんとした特約店で売ってますから、問題はないんでしょうけど。わかりにくいですね。

わざわざ既存のお酒を純米酒化したこの商品、買ったお店でのお話では世界に向けて売っていくためのお酒だそうです。アル添のお酒は海外では理解を得にくいのだそうでして、久保田としても中核となるレギュラーの純米酒が必要なのでしょうね。

ちなみにお値段は4合・1430円(税込)。普通の千寿が1188円ですから242円の価格差ですね。さて、この価格差の意味があるのか?試してみましょう。

スペックを確認します。今回も公式HPに載っているので助かります。

アルコール度 15%
精米歩合 50%/55%
日本酒度 +3
酸度 1.3
アミノ酸度 不明
純米、火入れ、吟醸づくり、加水あり、炭素ろ過

アル添の千寿との違いは、日本酒度が低くて酸度が高いことですね。もちろん純米酒であることもあります。僕の想像では醸造アルコール添加をやめる→甘さが減るから日本酒度を下げる→日本酒度とのバランスを取るため酸度を上げる、なのかなぁと感じる数値です。まあ、アミノ酸度わからないし、十分間違っている可能性ありですが!

まあ、飲んでみましょう!

◆すっきりしていてナチュラルな吟醸酒

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味の第一印象(冷酒)は「甘くなくてかなりドライ。味わいの流れが自然!」というもの。ほおお、こうきましたか。

色はほぼ無色透明で、これはいつもの久保田という感じですね。活性炭ろ過の影響です。香りも同様に活性炭で除去されているのですが、これはほんのりバナナやセメダインの香りが残っています。アル添の千寿よりも表情豊かだなぁと感じますね。

味わいは甘みがない、本当にない(笑)。アル添千寿にはあったトロっとした甘みが消えてなくなっています。代わりに存在するのが爽やかな酸味。実にスッキリで涼やかです。まるで夏酒、いや白ワインですね。ドイツのリースリングみたいな。

ただ後味、キレの部分は、まさに久保田な辛さで締めてきます。ここは譲れない久保田らしさなのでしょうね~。普通の千寿とそっくりです。ただアル添版では不自然に刺激と苦味が盛り上がってキレるのですが、この純米吟醸版千寿はゆるやかに辛さが出てきます。これは典型的なアル添と純米の差ですね。

◆好みの違いで選びましょう

新商品の千寿、わざわざ純米化して出す意味あるのかなと思いましたが、しっかり差別化されており好印象でした。僕はアル添千寿の甘さが好みなのでそっちを選びますが、これは優劣ではなく好みの差でしょう。好きな方を選ぶといいと思います。キレの性能もあって、食中ではどちらも似た印象になりますし。

ただ、普通の千寿は「千寿」という商品名のままで、こっちは「千寿・純米吟醸」なのは、お客さんにとってわかりにくくないのかなぁって思います。間違えて買う人出そうですよね。さらにもともとあった純米吟醸である紅寿との区別をどう伝えるのでしょうか。この前の新商品「久保田・純米大吟醸」もですが、どうにも久保田は売り方がちぐはぐですねぇ。



「久保田 千寿 純米吟醸 R1BY」、千寿の名に恥じないいい出来の吟醸酒でした。淡麗辛口派の方は一度試してみてください。