こんにちは~。お酒ミライの神奈川建一です。今回もインフニット酒スクールの日本酒中級コースのレポートを書きたいと思います。

前回のレポートはこちらです。


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今回は「脂肪酸」のお話です。え、そんなの日本酒に関係あるの?と思われるかも知れませんが、特に日本酒の香りには影響するので覚えておきましょう~。

脂肪酸は生き物(ヒト、動物、植物、微生物)が生きていく上で必ず生成する成分でして、生き物の匂いの素でもあります。そのため生臭い印象のものもあり、バターやミルク、油脂やロウのようなイメージが浮かぶ香りをもつ脂肪酸もあります。

日本酒においてはお米の主な成分である「デンプン、タンパク質、脂質」の内、「脂質」が元となって脂肪酸が発生します。これは日本酒の香りに大きく影響しまして、サラダ油やロウ、樹脂のような印象をもたらします(専門的にはオイリーな印象、なんて言うそうです)。なんか気持ちいい香りには聞こえませんよね。そのとおり、端的に言って脂肪酸は「臭い」匂いなのです(笑)。

(※ちなみに脂質から生まれる脂肪酸は長鎖脂肪酸エステルであり、リノール酸エチル、ミリスチン酸エチル、オレイン酸エチルなどとなります)

そして、脂肪酸の元となるお米の成分である「脂質」には大きな特徴があって、お米を磨いていくと精米歩合50%でほぼゼロになるということです。つまり、磨いたお酒は脂肪酸の臭さが出ないんですね。逆に言うと、脂肪酸の臭い香りがあるお酒は「お米が大きい」ということ。精米歩合が低い磨いていないお酒の可能性が高いのです!

なんと、香りだけでお酒の精米歩合を予想できるんです。面白くないですか?なんか油っぽい重い香りがあるな~と感じ取れれば、お米が大きい証拠なのです。

ちなみにリンゴの香りを出す吟醸香の成分であるカプロン酸エチルは、お米の成分の内「デンプン」が元になっているのですが、これも脂肪酸の仲間です(中鎖脂肪酸の一種)。そのため「ミルク、牛乳」のような香りも持っています。実はこれがカプロン酸エチルを見分けるためのキーになるんですね。リンゴのイメージだけだと、もう1つの吟醸香である酢酸イソアミルと区別をつけられないからだそうです。こんなところでも脂肪酸の特徴が役立つのです。

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それでは今回のティスティングです。当日は5本飲み比べました。

写真 2019-01-27 20 58 31




①翠玉 特別純米酒
アルコール度 15%
精米歩合 55%/59%
日本酒度 -4.8
酸度 1.5
アミノ酸度 1.2
酵母 K-9

②みむろ杉 特別純米辛口おりがらみ
アルコール度 15%
精米歩合 50%
日本酒度 +6
酸度 1.9
アミノ酸度 不明
酵母 K-9

③宮寒梅 純米大吟醸 29福
アルコール度 16%
精米歩合 29%
日本酒度 +1
酸度 1.4
アミノ酸度 1.0
酵母 宮城酵母

④遊穂 純米吟醸 無ろ過生原酒
アルコール度 17%
精米歩合 55%
日本酒度 +6.9
酸度 2.0
アミノ酸度 1.2
酵母 K-9

⑤早瀬浦 純米 無ろ過生原酒
アルコール度 19%
精米歩合 55%
日本酒度 +11
酸度 2.1
アミノ酸度 1.6
酵母 K-901



以下、先生のコメントです。

①の翠玉はお酒にけっこう色がついている。ソトロンがあるという証拠だ。香りはフルーティだがソトロンも混ざりあまり綺麗とは言えない。またカビっぽい匂いが混ざっていて、これはTCAというオフフレーバー。

味は数値から想像するほど甘くない・・・?そう、実はこのスペックは去年のもの(この講義はH31.1.27実施)。今年のは全然味わいが変わっているのだ。ずっとドライで苦酸っぱい。予想スペックは日本酒度+1、酸度1.5、アミノ酸度1.0~1.1。

②のみむろ杉は強いにごりに微発泡が見える。フレッシュ感を前面に押し出しているようだ。香りも酸味と青っぽい香りが混ざったクールなもの。表記はないがおそらく生酒だろう。

甘みはほどほどで後半苦味を感じる味わい。荒々しくフィニッシュはドライ。キリっと爽やか。狙いがわかりやすいお酒だ。アミノ酸度は0.9~1.0ぐらいと予想。

③の宮寒梅は精米歩合29%というすごく磨いたお米で醸しているお酒。色も非常に綺麗。香りは余計な匂い(イソアミルアルコールやソトロン)がなく、磨いたお米を使ったお酒ならではの香りになっている。

味わいは16%とは思えない、軽くてシンプルなテイスト。その理由は苦味が存在しないこと。これはすごい。苦味がないと厚みも感じられないので、人によっては物足りないお酒という評価もあるだろう。

④の遊穂は無ろ過生原酒の吟醸酒。色も濃く、いかにもムロゲンという感じだ。香りは重い甘さという印象で、いかにもアルコール度が高いお酒だと感じる。

全体的に味が多くずっしりくる。最後まで甘旨で余韻も長く厚みがある。後半苦さと甘さが組み合わさって、重いなりにバランスがよい。これは高いアミノ酸度のおかげだ。

⑤の早瀬浦も無ろ過生原酒。これまたムロゲンらしくお酒の色が濃い。香りは強烈にハーブやら杉の木やらの青っぽい香り。若々しさが突出している。アルコール度が高いため、香りがより強調されている。

味わいはアルコールなどの刺激がお酒全体を支配しており、もう痛いお酒と言っていいレベル。刺激的すぎる。こんなお酒だが、アミノ酸度1.6という高い数値のおかげでなんとか飲める。アミノ酸度が飲みやすさに貢献することがよくわかるお酒だ。

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今回のレポート、いかがでしたでしょうか?脂肪酸は最近流行りの低精白でモダンなお酒にもしっかりあるので、わかるようになると楽しいですよ~。精米歩合80~90%ぐらいのものは感じやすいので試してみてください。

ちなみにこの授業で宮寒梅の29福に感動して、翌年のを買っちゃいました。レビューも上げているので、よければご覧ください。



それでは、また次回のレポートでお会いしましょう~。



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