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味の傾向:
新政がつくる定番の火入れ純米酒。程よい甘さを支える酸味が秀逸。そしてその甘さと酸味は驚異的なスムーズさで最後まで続く。アルコールの刺激はなく、お酒であることを忘れてしまうぐらいだ。

僕の評価:90点/100点(2年前よりさらにおいしくなっている。恐ろしい蔵元だ)

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さあ、僕が一番好きな銘柄のお酒をご紹介!秋田の「新政(あらまさ) エクリュ R1BY」であります。十四代も黒龍も好きですけど、やっぱり僕は新政好きなんですよね~。2年ぶりに飲みます。



このお酒はカラーズと呼ばれる火入れ(加熱殺菌処理。変化に強くなる)を行ったお酒シリーズの商品で、その中でも一番お手頃な1本です(税込1500円ぐらい)。いわば新政の入門酒と言っていいでしょう。

ちなみにエクリュと名前がついていても異なる商品であるバリエーション違いもたくさんあるので要注意です。新政はこういう限定商品がたくさんあって困ります。少しは剣菱を見習ってください。まあ、そのぐらいを追えないようじゃ新政ファンを名乗るのもおこがましいらしいですが。僕は失格ですか、そうですか。

スペックですがネット上には見つからず。スクールではよく課題酒になるので、スペック見るんですがね~。おそらくロットごとの数値がぶれやすいので、積極的には公開していないんだと思います。

アルコール度 14%
精米歩合 55%/65%
日本酒度 不明
酸度 不明
アミノ酸度 不明
純米、火入れ、原酒、無ろ過、吟醸づくり

一番のポイントはアルコール度14%です。2年前は15%でした。新政は近年じわじわとアルコール度を下げているのですが、このエクリュもついに14%になったのですね。これは味わいに大きな影響力を持ちます!「甘さ、苦さ、刺激」が確実に下がっているはずですが、それがどういう風に味に反映されているのか。

確かめてみましょう。

◆なんてスムーズな味わい・・・完敗だ

とりあえずグラスに入れて色を見ます。ほ~、やはり色はあまりついてないみたいですね。糖分も多くて火入れなのにまるで生酒のようです。ちょっと薄にごりしているので、無ろ過だとわかります。

香りはバナナ系ですね。これもいつもどおり。バナナに混ざってケミカルな匂いもあります。

飲んでみる。

ンンン~~~~~!??? なんじゃこの驚異的なスムーズな味わいは!まろやか過ぎて引っかかる味がまったくない!

げー、ここまでおいしかったっけ?2年前も90点つけましたが、その時よりさらにおいしくなっていませんか!?

基本のテイストは甘口なんですが、けっこう控えめな甘口です。これは僕的にヒット。そしてその甘さを邪魔しない程度の酸味がしっかりある。まあ、新政定番の味わいです。

そしてこの味が最後までほとんど変化しないで続きます。これがすごい、めちゃくちゃまろやかに感じるんです。こういうのに人間は弱い!普通の日本酒なら苦味や刺激が味わいを切ってしまうのですが、このエクリュには苦味や刺激がほぼゼロなので、邪魔するものがなにもないんです。

これがアルコール度14%にしたかった理由ですね。すごくその効果を実感します。このスムーズさを生むための低アルコール化なのでしょう。いやあ、よくぞここまでたどり着いたと思います。新政とんでもねぇ!

◆全ての商品に蔵の魂が込められている

ついに新政もこの境地に来たかと涙が出るような1本でした。このまろやかさ、手段は違うのでしょうけど高木酒造が目指すものと同じ味わいです。新政も日本一の酒蔵に本気でなるつもりなんでしょうね。

この前レビューした朝日鷹もそうですが、よい酒蔵は一番安い商品が一番力入っていたりします。このエクリュもそれが実感できる商品ですね。どこに出しても恥ずかしくない1本でしょう。

ちなみに上記の感想は開栓初日のものです。翌日以降は酸味が強くなりバランスが大きく変化するので、印象がかなり変わります(滑らかさが増しすぎて、水っぽさも強くなる)。やはり新政は初日が最高だなということも、再度実感しましたね(笑)。

「新政 エクリュ R1BY」、見かけたら即買いでOKです。今年のエクリュもまたとんでもなくいい出来ですよ。