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味の傾向:
クラシックな山廃づくりで有名な車多酒造の新作。純米大吟醸だが香りは皆無、甘みの存在感はあるが控えめ、そしてのど越しのまろやかさが最高にうまい!ところどころに渋みもあり、それがまた心地いい。傑作だ。

合わせた料理:野菜天ぷら、肉詰めピーマン

僕の評価:90点/100点(唸るしかない滑らかな舌触り)

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久しぶりの石川県のお酒です!「天狗舞(てんぐまい) 山廃純米大吟醸 白」であります。なんか、石川のお酒と言うと、無条件でいいお酒判定しちゃう自分がいます。なんででしょう。

天狗舞をつくる車多酒造は濃醇な味わいの山廃系のお酒で有名ですね。僕も基本の山廃純米を過去にレビューしています。この時は剣菱があればいらないよね!みたいなコメント書いてますね。これはひどい。若気の至りです、すみません!



今回のこの山廃純米大吟醸・白は、モダンなラベルデザインからわかる通り新作のお酒です。どうも限定流通のようで、酒販店でも飲食店用の販売ページでしか見当たりません。僕が買えたのは、コロナ禍で余ったのが偶然店頭に並んだからなのかな?と推測しています。

さて、スペックです。意外と詳細に判明しております。

アルコール度 15%
精米歩合 45%
日本酒度 +1
酸度 1.3
アミノ酸度 不明
純米、加水あり、火入れ

全体として優しい味わいを思わせる数値ですね。酸度も1.3とやや低め。日本酒度が思い切って低いので糖分は多そうですが、これをどう活かしているかが注目でしょうか。ぱっと見は、よくある純米大吟醸という感じもします。

まあ、とにかく飲んでみましょう。

◆え・・・なにコレ?

注いでみると色は黄色い。これは天狗舞っぽく見えます。しっかり熟成しているということでしょう。苦さのサインですね。

香りは・・・あれれ全然ない。やや甘い香りがして、これは糖分の匂い。それとツーンとくるマジックの香り。ほほう、フルーティな吟醸香がない。これ、けっこう熟成してるな?1年以上か?

ごくり

うぎゃあああああああ、のど越し滑らかでキモチイイぃぃぃぃ!!!

キてます、キてます。素晴らしい舌触りですよ。これだけでこのお酒買った価値があります!

全体的に淡い味わいで、精米歩合の高い大吟醸らしさに溢れています。もうちょっと甘ったるいかなーと思っていたのですが、食中でも甘さは程よくバランスいいですね。ところどころに渋さや苦さが顔を出し、アクセントになっています。ここが天狗舞らしさですね。

そしてお酒を飲むこむ時の刺激のなさ!これが心地よいんです。このテクスチャーを出せる蔵元はすごく少ないです。お酒の色から考えるともっと苦いはずなのに、全然苦くないし刺激もない。これが車多酒造の熟成技術でしょうか。素晴らしいです。

◆低温熟成へのシフト

くあー、衝撃の1本でしたね。書き方で気づかれた方もいるかもしれませんが、これは高木酒造の滑らかな味わいと同系統の味です。この香りの無さから推測して、けっこう低温下で熟成をしていると思われます。吟醸香は熟成すると失われるんですよ。

この低温熟成という技術、市場を見渡すと大きい蔵元がチャレンジしていることに気づきます。醸し人九平次、八海山、新政、黒龍、そして天狗舞・・・。なにか大きな流れを感じますね。わくわくしてきました。やはり現代の日本酒は、ダイナミックに変化しているようです!

「天狗舞 山廃純米大吟醸 白」、日本酒の味わいがここまで進化するということ見せつける驚愕の1本。絶対飲んでみてください!