今回もインフィニット酒スクールのレポートをお届けします。テーマは「味わいの表現方法」です!


前回のレポートはこちら(前後編です)

皆さんはお酒の味を人に伝える時、注意していることはありますでしょうか?僕を含めてあまり意識していない人も多いのではないでしょうか。

味覚(と嗅覚)を他の人と共有するのが難しいのは、ほぼ個人個人の主観でしか語ることができず、客観的な評価がしにくい点にあります。

たとえば、6面サイコロを観察して「四角い形」と表現するのは客観的に正しいとわかりますが、カレーを食べて「甘い」と表現されても主観が入りすぎていて客観性が確保できません。その人が辛いものマニアなだけかもしれないからですね。

同様に日本酒の味わいの表現でも客観的に説明するのが難しいということを前提にしなければなりません。そこで今回はそのためのルール、テクニックをレポートします!

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日本酒の味わい表現のカテゴリーは3つになります。

①強弱・濃淡

②状態・印象その1

③状態・印象その2

この3つです。

香りの表現方法とは異なり、比喩(リンゴのような~、飴のような~、など)が入っていない点に注意です。これはできる限り主観を排除するのが目的ですね。以下、1つずつ説明します。

①強弱・濃淡は味の強さを表現します。「しっかりとした、力強い、控えめ、ほんのりとした」といった言葉を使います。ここはわかりやすいですね。



②状態・印象その1は①の味の状態を説明します。たとえば「しっかりとした甘み」を「豊かな、はっきりとした、ボリューム感、ふくよかな、重厚感のある」といった状態をあらわす表現でより詳しく説明するということです。

注意点は甘味・旨味で使う表現と酸味・苦味で使う表現が変わるということ。酸味・苦味では「軽快な、シャープな、清涼感のある、軽やかな」といった言葉を使いますが、これは甘味・旨味では使いません。逆に「ボリューム感、厚みのある、豊かな」といった言葉は酸味・苦味では使いません。



③状態・印象その2は良い印象、悪い印象を説明します。かなり主観が入りこんでくる部分ですので、慎重に使います。ここでお酒の評価が決まりますね。

甘味・旨味では「程よい、上品な、心地よい、バランスのよい、サラリとした、甘くダレた」などの言葉、酸味・苦味では「若々しい、程よい、キレのある、奥行きのある、舌に残る、刺激的な、ピリピリとした」などの言葉を使います。また舌触り(テクスチャ―)も評価の対象に含めて「上品な、心地よい、トロトロした、ざらつき感のある、トゲトゲした、堅い」などの表現を利用します。

以上が味わいの表現において守るべきルールですが、これだけだとわかりづらいですよね。そこで、これから実際に先生が行ったティスティングで体験してみましょう~。

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①栄光富士 純米大吟醸 雄町 無ろ過生原酒
アルコール度 16.9%
精米歩合 50%
日本酒度 -2
酸度 1.3
アミノ酸度 1.1
酵母 山形酵母


まず「しっかりとした甘味のふくらみ程よく旨味がバランスし舌触りは滑らか」

そして「徐々に広がる酸味に加え、力強く深みのある苦味は奥行きを与えつつアルコール感と共に長めの余韻を残しながらフィニッシュ」となります。

山形のお酒らしい濃厚な甘口酒の印象ですね。

実は味の後半に不要な苦さ(アルコール、コハク酸、アミノ酸由来)があるのですが、それを「力強く深みのある苦味は奥行きを与えつつ」と表現しています。悪い印象を置きかえる方法だそうです。


②醸し人九平次 うすにごり生
アルコール度 16%
精米歩合 不明
日本酒度 不明
酸度 不明
アミノ酸度 不明
酵母 協会14号


「スタートは程よい甘味のふくらみと、やさしい旨みのバランスから滑らかな舌触りが特徴」

「徐々に広がる酸味は豊かで、清涼感を与えながら後口に続きキリリと引き締まったドライでフレッシュ感ある余韻を残す」

①の栄光富士と比べてどう感じるでしょうか?ずっと軽やかで爽快な印象のお酒とイメージできますね!


③宮寒梅 山田錦
アルコール度 16%
精米歩合 40%
日本酒度 ±0
酸度 1.4
アミノ酸度 1.0
酵母 不明


「とてもやさしい甘旨味は上品で、舌触りの滑らかさと相まって心地よい伸びを感じる」

「ゆるやかに広がる酸味は全体のバランスを取りながら後口へと続き、アフターでは軽やかながらもスッキリとした余韻と穏やかさを与える」

とても淡い綺麗な味わいを予感させますね。そしてまろやかそう!


④廣戸川 純米吟醸
アルコール度 16%
精米歩合 50%
日本酒度 +2
酸度 1.4
アミノ酸度 0.9
酵母 煌901-A113&M310


「程よい甘みのふくらみに加え、滑らかな舌触りは心地よく」

「徐々に広がる酸味と苦味はスッキリとした後口を与えながら、緩やかにフェードアウト

③の宮寒梅に似ていますが、よりキリッとした印象なんだろうなぁと感じるコメントです。後半のフェードアウトという言葉は「消えていく」という言葉でも表現できますが、消えるはネガティブワードなので、あえて使わないのだそうです。

◆◆◆

いかがでしたでしょうか?読むだけでお酒の味わいが思い浮かぶようなレビューではないでしょうか。

僕としては、自分がせっかく学んだのに全く活かせていないと猛反省です。やっぱり一度勉強しただけじゃだめです。ちゃんと復習して実践しないと。さっそく次回からのレビューには反映させます!

あと先生の言葉を文字で打ってみて思ったのは、味わい(甘旨酸苦)については最小限で、お酒の印象に力点があるということです。授業中も「全部の味を言おうとすると、むしろ印象がぼやける」とおっしゃってましたので、僕を含めた素人レビュアーは気をつけたいところですね。

今回は以上になります。また次回のレポートでお会いしましょう!




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