写真 2021-10-16 20 27 06 (1)
味の傾向:精米歩合80%の純米酒。香りは穏やかで優しい感じ、バナナや梨のようなにおいに穀物を思わせる香ばしい印象が重なる。味わいは口当たり柔らかく甘く、穀物っぽい渋味苦味などがしっかり混じる。洗練された田舎風のイメージがあるお酒だ。

僕の評価:75点/100点(低精白が身近になるお酒)

◆◆◆

こんにちは、最近秋田と奈良と滋賀のお酒ばかりレビューしている神奈川建一です。だって好きなんだもん。

さて、今日は秋田酒!「角右衛門(かくえもん) 純米酒80 R2BY」をご紹介します。名前のとおり精米歩合80%のお酒です。玄米から2割だけ磨いたお米を使ってつくった日本酒ですね。

多くの日本酒は最低でも30%ぐらいは磨いたお米を使っています(精米歩合70%)。その理由は、お米を磨くことによりタンパク質と脂質を減らす必要があるからですね。この2つの成分がたくさん残ったお米でお酒をつくると不要な香りと味わいが出てしまい、お酒の品質が下がるのです。具体的には樹脂やロウのような香りが出て、苦味や渋味による雑味が生まれます。

しかし、最近は磨きすぎたお米でお酒をつくることへの反動として、もっとお米本来の味わいを活かしたお酒をつくるために低精白米を使う酒蔵が増えてきました。初期の頃は不快な香りと雑味満載のお酒も多かったのですが(新政・純米90とかヤバかったんですよ)、最近は技術力向上でおいしいお酒も増えてきました。いい時代になったもんです。

今回の角右衛門もこの流れを感じさせる商品ですね。価格も高くない気取らないお酒のようですが、どのような味わいでしょうか。楽しみです。

スペックです。なんと全公開。嬉しい!

アルコール度 15.5%
精米歩合 80%
日本酒度 +3
酸度 1.7
アミノ酸度 1.1
純米、吟醸づくりあり、火入れ、加水あり

派手さのない落ち着いた味わいを予感させるスペックですね。アルコールも標準ですし、日本酒度はやや低めですが、酸度がやや高めなのでバランスが取れているのでしょう。アミノ酸度がやや高めなのは、精米歩合からきているのでしょうね(タンパク質がアミノ酸に変化するため)。やはり精米歩合80%の影響を観察したいですね~。

◆垢抜けていないのに洗練されている

冷酒でグラスにそそぎます。ふむ、きれいな透明感ですね~。低精白のお酒は色がつくことが多いのですが、この角右衛門はその気配を感じさせません。加水のお酒とはいえすごいな。火入れが上手なのでしょうか。

香りを確認。おっ、ほどよいレベルでフルーティな香りがしっかり出ています。バナナとか梨のイメージかな。そしてそこにちょっとオイリーな穀物のような香りが混じる。これぞ低精白酒の香りですね~。でもきれいにまとまっている。上手ですよ。

飲みます。

優しいまろやかな甘さがまさに純米酒、そこに渋味苦味がじわじわ入ってきて穀物からできたお酒って印象を感じさせる!

こ、これは・・・めちゃくちゃ洗練された田舎酒!?そんな感じです!

口当たりは滑らかな甘さです。よくできた純米酒で出会える味わいですね。すごくおいしい。

その後だんだん苦味や渋味が出てきて甘味と混ざります。精米が60%の純米酒とかではまず感じない雑味ですね。これが低精白酒の特徴です。

しかし、悪い印象にならないんですよ。むしろこの田舎っぽさ、穀物っぽさをどう活かそうか考えちゃう。熱燗にして根菜を使った料理に合わせたいなーとかそういうアイデアが自然と浮かぶんですね。こういう個性あるお酒は好きですねぇ。

◆低精白はもっと進化する

低精白のお酒もここまできたんだな~と感じ入るお酒でした。万人向けの味わいに仕上がっています。もちろん以前も驚くほど飲みやすい低精白のお酒はありましたが、実現できる蔵が限られており、かつ高コストだったりしました。



今回のこの角右衛門はリーズナブルな価格であり、お酒自体も気軽な雰囲気を持っています。誰でも手に取れるおいしい低精白日本酒。こういうお酒がこれからの日本酒の可能性を広げていくのでしょう。

「角右衛門 純米酒80 R2BY」、新しい日本酒の夜明けを感じさせる良酒です。見かけたらぜひ飲んでみてください。