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味の傾向:加水することによりアルコール度を13%台に落としている純米吟醸酒。香りはほんのり米のおこげや甘いサツマイモを思わせるにおい。味わいは口当たり滑らか、甘味旨味は穏やかだが熱燗にするとふっくらと心地よい。低アルコールがしっかり活きた傑作だ。

合わせた料理:肉じゃが

僕の評価:90点/100点(13%の度数で魅せる熱燗酒)

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真冬なのに暖房もかけずに毛布にくるまりながら冷酒を飲んでいる神奈川建一です。エアコンの冷暖房苦手なんですよ。

さあ、前回に引き続き島根酒ですよ!「無窮天穏(むきゅうてんおん) 生もと純米吟醸 天雲 二火 R2BY」であります。あまくも、と読むそうですよ。

前回すばらしいパフォーマンスを見せてくれた純米大吟醸が最高だったので、今回のお酒も期待が上がります!


この天雲最大の特徴は、アルコール度13%台の低アルコール日本酒だということですね。しかも最近流行の低アルコール原酒(発酵を途中で止めることにより、低いアルコール度と濃い味わいを両立させたお酒)ではなく、アルコール度18%まで発酵させた原酒を、加水することにより13%に落としたお酒であるところがポイントです。

水を加えることでアルコール度を下げたお酒最大の特徴は、お酒のエキスが薄まっているということです。つまりしぼった直後の味わいより淡くなっているということですね。味わいが軽くなって飲みやすくなるのですが、逆に物足りなさの原因にもなります。

この天雲は原酒より5%近く下げているので、相当な量の水を加えているはずです。通常の純米吟醸酒だと2~3%程度が普通でしょうから、確実に味が淡いはずです。さてどんなバランスになっているのでしょう?

スペックを見ます。

アルコール度 13.6%
精米歩合 60%
日本酒度 +4
酸度 不明
アミノ酸度 不明
純米、吟醸づくりあり、加水あり、火入れ

アルコール度以外は特筆すべき点はないですね。酸度とアミノ酸度が不明なのが残念。吟醸づくりはしていますが、無窮天穏なのでフルーティな香りは狙っていないでしょう。飲んでみるしかありませんね!

◆まさに甘いお湯

今回も島根酒ということで熱燗(ぬる燗)でそそぎますよ~。色を確認します。おおお!?色が薄くない!前回飲んだ2年熟成で原酒の純米大吟醸と変わらない黄色いトーンです。これは・・・いったいどうなっているんだ!?(笑)薄まっているはずなのに!

香りを確認。やはり穀物系の香ばしいにおいがしますね~。おこげ、サツマイモなどの印象。全体の香りの強さは穏やかです。熟成酒らしいにおいは少なめで、甘い香りがやや強めですね。1年未満の熟成といったところでしょうか。

飲みます。

ひょおおおおおお!!!まろやか、柔らか、心地よい!!

すいません、知能レベルがめっちゃ下がっています!しかし、それぐらいにうまい!

アホな表現ですが、温かい吟醸酒って感じました。いや、そりゃ吟醸酒温めているんだからそりゃそうじゃんってわけですが!

とにかく舌触りがいいです。淡い、しかし弱くない甘さが口の中を満たします。

酸味や苦味もありますが、どれも繊細で奥ゆかしい。ただの薄味のお酒になっていません。そしてふわっと消えていく余韻。すげぇ・・・。

合わせる肴は珍味より普通の食事がよさそう。肉じゃがで飲みましたが、パーフェクトでした。パーフェクト。肉じゃがの甘さが引き立つんですね。お酒が料理をまったく邪魔しません。あと和らぎ水が不要なぐらいアルコール度が低いのもいい。体が冷えないので、ずっとお風呂に浸かっているみたいな気分でした。

◆いったいどうなっているんだ!

いやーこれはすごいお酒です。なんでこれだけアルコール度下げて物足りなくないんでしょうか?この天雲は原酒バージョンが18%の度数で発売されているのですが、もしかして別の原酒(15%とか)をつくって、わざわざこの13%の天雲をつくった?うーん、わかりません。

あと熱燗の温度ですが、上げすぎると甘みが減りすぎるので、40~45度ぐらいがいいかなという印象ですね。やはり淡いお酒ではあるのです。とんでもないバランスで成り立っている淡いお酒なんですが!

「無窮天穏 生もと純米吟醸 天雲 二火 R2BY」、かなりやばい低アル熱燗を楽しめる一本です。冬の季節にめちゃくちゃおすすめです!

今回の無窮天穏で行われている加水について。日本酒はこれがかなり重要なんです。