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味の傾向:静岡の人気酒蔵がつくる本醸造シリーズの1つ。香りは穏やかなメロンの印象で食欲をかき立てつつも料理を邪魔しないバランス。味わいは非常に淡い味わいで甘味が食事になじむ。しかし、妙に苦味が強く食中酒としてアンバランス。欠点となっている。

僕の評価:55点/100点(なにかがおかしい)

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地元のお気に入りのスーパーの日本酒コーナーがだんだん強化されてきて、喜びに満たされている神奈川建一です。今日も2本買ってきました。

今回は静岡酒!「磯自慢(いそじまん) 別撰 本醸造 R3BY」であります。僕の大好きな銘柄です~。一升瓶で買いました!

言わずと知れた静岡を代表する銘柄ですが、ここの特徴はアル添、つまり醸造アルコール添加のお酒が得意だというところです。今回のお酒はアル添の本醸造ですが、このジャンルだけで3種類もレギュラー商品があります。去年の夏頃に別の本醸造をレビューしましたね。


醸造アルコール添加という技術は誤解されやすいのですが、その目的はお酒の香味バランス調整にあります。アル添をすると「味わいが軽くなり酸味が増す」という効果があるのです。これを使って微妙な味の調整をするのが目的なのですね。

非常に高い技術を要求される工程なのです。アル添が得意な酒蔵に一流どころが多いのは、これが理由なんですね。

さて、この別撰本醸造、今年はどういう味わいか確かめてみましょう!

スペックです。

アルコール度 15~16%
精米歩合 60%
日本酒度 +4~+5
酸度 1.2
アミノ酸度 不明
アル添、吟醸づくりあり、加水あり、火入れ

ザ・磯自慢!と言わんばかりの数値です。中庸なアルコール度にしっかりプラスにきれた日本酒度、そして低い酸度が目立ちます。このあたりはブレないですね。飲んで出来を確認しましょう。

◆なんだこの過剰な苦味は・・・?

いつもどおり冷酒でグラスにそそぎましょう。透明度は高いですね。そしてほんのり色づいている。まあ、火入れの本醸造としてはごく普通な見た目です。

香りを確認します。ああ~、ほどよくフルーティ!磯自慢の本醸造と言えばこれですよねぇ。ほんのりメロンを思わせるにおいです。心地よい香りがあると食欲が増します。でも料理を邪魔するほどではない強さ。さすがの調整です。

飲んでみます。

ふわりと甘いやわらかな味わい!が、不釣り合いな強い苦味があるぞ?

あれれ、ちょっとバランスが悪い!?

口当たりはさすが磯自慢と思わせるやわらかな甘みがあります。僕のイメージではストロベリーみたいな印象。強すぎず弱すぎず、それでいて軽やか。

しかし、後味で出てくる苦味が強すぎて食事の邪魔をするシーンがよくありました。磯自慢はもともと苦さがあるお酒ですが、ここまで食事になじまないことはなかったはずなのに・・・?

磯自慢の苦味はコハク酸という貝の出汁に含まれている成分が原因なのですが、酒づくりがうまくいかなかったのでしょうか?コハク酸が強すぎる+他の苦味要素(ペプチドあたり)も多い気がします。

うーん、これは致命的ですねぇ。

◆酒づくりは難しい

僕が今まで飲んだ磯自慢は全部おいしかったので、今回のようなケースは初体験です。おそらくなにかしらのミスがあったのでしょうね。一流蔵ですらこういうことがある。微生物と対話しながらつくる酒づくりというものが、困難をたくさん抱えているということです。

4年ぐらい前のレビューです。

お酒は出荷した後にしかわからない失敗というのもありまして、瓶詰めした時は完璧だったのに、流通の過程で欠点があらわれてしまうということがあります(ジアセチルの発生など)。今回のお酒もそういう不運が原因かもしれません。

「磯自慢 別撰 本醸造 R3BY」、残念ながら口に合いませんでした。次に期待しましょう。