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 こんにちは~、日本酒ブロガーの神奈川建一です。

 最近の日本酒はフルーティな香りがたまらないですよね~。こんな日本酒があるの!?と驚いて日本酒好きになった方も多いでしょう。ヒットを飛ばす銘柄は、フルーティな香りがしっかり出ているパターンが多いですね。

 そんな日本酒の香り、実は単純で単調であるなんて言ったら信じられます?

 おいおい、適当なこと言ってるんじゃないよ?と言われそうですが、マジです。事実なんです。日本酒の香りの特徴は、そのシンプルさにあるのです。

 最初に書いた今人気のフルーティな日本酒ですが、その香りを果実の印象にしているのはたった2種類の成分だけなのです(酢酸イソアミルとカプロン酸エチルといいます)。これだけなんですよ。うっそ、少なッ!って思いません?ほとんどのフルーティ酒は、この2つの成分の強弱だけで個性が決まっているのです。

 さらにお酒のテイスティングなどで確認すべき基本の香りは、フルーティさを出す成分である上記の2つを含めてたったの10種類なのです(※1)。10種類!?めっちゃ少ないと思いませんか?

 そうなのです。日本酒の香りは単純なのです。メジャーなお酒(ワイン、ビール、ウィスキーなど)と比べた時、とても重要なポイントになるので、ぜひ押さえてください。

 では、そこからどういう日本酒の特徴が生まれるでしょうか?メリットとデメリットの面から考えてみます。

 まずはデメリットです。

①香りに奥行きや複雑さが出にくい

 日本酒の香りを構成する要素が少ないので、いわゆる奥行きや複雑さといった雰囲気が出にくいです。基本のイメージがシンプルなのですね。そのため他のお酒と比べると単調と評価されがちです。高級なお酒においては複雑な香りはとても重要なので、高価な日本酒の弱点でもあります。

②お酒が似通ってしまう

 銘柄が異なっても、どこかで飲んだような?という印象を受けることが多いです。特にフルーティなタイプは基本の香りが2つしかないので、バリエーションが出しづらいです。香りの要素が少ない高精白な大吟醸などで問題になりがちです。

 う~ん、なかなか厳しい印象です。ではメリットはどうなるでしょうか?

①全国、世界中でおいしい日本酒がつくれる

 日本酒の香りの種類が少ない原因の1つが、ほぼすべての香りを酵母(アルコール発酵してくれる微生物)がつくっているということです(※2)。これは日本酒をつくる地域や原料に香りを左右されないということでもあります。つまり、よいつくり方をすれば、日本中、世界中どこでもおいしい日本酒がつくれるということですね。

②新しい香りで新しい味わいがつくれる

 香りの基本が10種類と書きましたが、もちろん例外があります。最近だと4MMP(マスカットのような香り)、樽の香り(シェリー樽やウィスキー樽)、木桶(発酵時にステンレスタンクの代わりに使う)などです。こういった新しい香りが加わると、もともとがシンプルな日本酒の香りは一気に変化します。まったく新しい日本酒がつくれるんですね。

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 以上、日本酒の香りの単純さ・単調さから生まれるメリットとデメリットを考えてみました。

 個人的にはデメリットは今までの日本酒の弱点、メリットはこれからの日本酒の未来につながっているなぁと思います。

 日本酒は進化するのがとても早いお酒です。あのフルーティな香りの1つであるカプロン酸エチルも、市場に出回り始めたのはたかだか30年前ぐらいからです。日本酒がこれからどう変わっていくのか、ワクワクしますね!実に楽しみです。


<注釈>
※1 10種類の香りは「お米由来成分、アルコール、アセトアルデヒド、乳酸、カプロン酸エチル、酢酸イソアミル、高級アルコール、酢酸エチル、各種脂肪酸エステル、ソトロン&スルフィド」となります。

※2 酵母がつくる香りは10種類からお米由来成分とソトロン&スルフィドを除いた8種類です。お米由来成分は酒粕の香り、ソトロン&スルフィドは熟成と火入れから生まれる香りです。




日本酒における香りの重要性についてはこちらで書いています。ぜひ読んでみてください。









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