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 こんにちは~、日本酒ブロガーの神奈川建一です。

 酵母と言えば、僕たち酒飲みにとっては神のような存在の微生物です。なんといっても糖分を食べてアルコールをつくってくれるのですから!日本酒に限らず、すべてのお酒が酵母なしには生まれないのです。

 当然お酒をつくる時にどの酵母を選ぶかは、生産者にとってとても重要な問題です。きっとさまざまな要素を考慮して決定されるのだと思います。

 ただ、僕たち飲み手が酵母のことを知って楽しいかどうかは、お酒の種類によって結構差があるんですよ。

 ワインの場合は、酵母を知る必要性はほぼないですし、商品アピールに使われることもありません。焼酎はごく一部の商品で特殊な酵母を使っていることを表記していますが(ワイン酵母や香り酵母など)、大半の商品は消費者向けに酵母の情報を伝えたりはしません。それに対して日本酒の場合は、少なくない数の商品が使っている酵母をアピールしています。中には酒蔵全体で〇〇酵母のみを使うことを宣言していたりします。う~ん、いったいこの差はどこからくるのでしょうか?

 結論から言うと、この差は香りが原因です。酵母がどれだけそのお酒の香りをつくっているかによって、商品における酵母の重要度が決まってくるのですね。

 ワインと焼酎では原料であるぶどうや芋、麦などが持つ特徴的な香りがお酒の個性になります。もちろん酵母も香りをつくっているのですが、個性となる香りは原料由来成分が大半なので、酵母は商品アピールの際には重視されないのです。

 対して日本酒は、原料から香りが出ません!原料の香りに対する影響力はゼロなのです。ワインや焼酎と比べるとすごい違いですよね。山田錦だろうと、雄町だろうと、原料からは直接的には香りが出てこないのです。

 そこで活躍するのが清酒用酵母なのですね。日本酒において、香りのほぼすべてをつくっているのが酵母なのです。他にも酒粕、熟成、樽熟成、木桶仕込みなどから香り成分は追加されます。しかし、日本酒の基本の香りはほとんど酵母がつくっていると言っていいでしょう。特に香りが洗練されている大吟醸などは、この傾向が強いです。

 これが日本酒において酵母が重要視される理由なのですね。飲み手である僕らでも、酵母の知識があるとお酒の理解が進み、面白さが増すのです。他のお酒では必要のない知識が日本酒では役立つというのは、なかなか興味深いですね。

 今後、使っている酵母を強くアピールしているお酒に出会ったら、「香りに特徴的な個性が出ているのかな?」と考えてみてください。日本酒とはどういういお酒なのか、より理解が深まりますよ!



日本酒における香りの重要性はこちらの記事がわかりやすいです。ぜひどうぞ。