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 こんにちは~、日本酒ブロガーの神奈川建一です。

 日本酒といえば酵母(アルコールをつくってくれる微生物)が味わいを決めると言われます。原料であるお米が、お酒の味と香りに対して影響力をほとんど持っていないので、相対的に酵母が重要になるのが日本酒の特徴です。これは他のお酒と比べて、大きく異なる点ですね。

 実際に、商品説明でも酵母をアピールした日本酒はけっこうあります。秋田の新政は協会6号酵母、長野の真澄は協会7号酵母で有名ですね。他によく使われているものは、協会酵母系では9号、10号、14号、18号などがあります。

 では、それぞれの酵母によってどのような差があるのでしょうか?清酒用酵母の味わいへの影響って、ホントのところどうなのよ?今回はそんな疑問について、ざっくりお答えしようと思います。

 代表的な清酒用酵母を表にまとめましたので、比較してみましょう。比較する項目は、お酒の個性を左右する香りと味にしぼっています(※1)。

表雛形7×9

 あれ・・・ほとんど同じ・・・?

 そうなのです。日本酒の酵母の違いを理解する際に重要なのは、酵母がつくる香りと味の種類は、どの酵母もほぼ同じであるということなのです。

 つまり、Aという酵母は〇〇酸エチルという香りを出し、Bという酵母は△△アルコールを出す、みたいな、酵母ごとに固有の香りや味というのは存在しないのですね。

 これは原料によって個性が決まる他のお酒と比べる際にとても大切です(例:ワインや焼酎)。こういったお酒は原料ごとに特有の味や香りを持つため、個性がとても明確になっています(※2)

 では、清酒用酵母の違いはどこにあるのかというと、香りや味の「強弱」が違うのです。例えば協会6号、7号酵母はカプロン酸エチルがほとんど生産できないので、これらの酵母でつくった吟醸酒は、酢酸イソアミル系の爽やかなフルーティな香りを持ちます。

 また、協会18号酵母はカプロン酸エチルをとても多く生産するので、特有の華やかでリッチな吟醸酒になります。他にもリンゴ酸を多く生産する酵母(協会77号)、コハク酸を多く生産する酵母(協会6号)などがあります。

 清酒用酵母はこの強弱が個性であり、酒蔵はそこを踏まえて酵母を選択しているのですね。

 日本酒においては、ほぼすべての香りと多くの味を酵母が生産するので、酵母の選択がお酒の個性に強い影響を与えるのは間違いありません。しかし、つくる香りや味の強弱が違うだけなので、酵母ごとの味わいの差は意外とゆるやかなのです。

 原料で個性が大きく変化する酒類に比べて、清酒用酵母による違いはそこまでではないということですね。これは日本酒がどういうお酒かを理解するために役立つポイントです。ぜひ、覚えておいてください!


<参考>
※1 他に酢酸エチル、各種脂肪酸エステル、4MMPがあるが、これらも酵母であればどの種類でも生産します。

※2 例えばワインだと、カベルネ・ソーヴィニヨンというぶどうはピラジンという特徴的な香りを持ちます。芋焼酎だとリナロールという香りが、独特な芋の香りをつくります。



酒米より酵母が重要な理由は、こちらの記事で解説しています~。