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 こんにちは〜、日本酒ブロガーの神奈川建一です。

 皆さんは濃い日本酒はお好きですか?原酒などに代表される濃厚なお酒は、はっきりした甘味や旨味を味わえるので、日本酒ファンの間で人気ですよね~。

 そのお酒が濃いか・淡いかは、飲む人の好みに直結するとても重要な要素です。焼酎やウィスキーと異なり、通常は他の液体で割って飲まない日本酒においては、製造段階での濃度調整がお酒の濃さを決めています。

 高度な製造工程を持つ日本酒は、濃度の調整方法がたくさんある上に自由度が高いです。そのため、めちゃくちゃ濃いお酒から、すごく淡い薄まったお酒までをつくり出すことができるのです。

 今回はそんな日本酒の濃度が、どのように決まるのかを解説します。これを知れば酒選びがグッとレベルアップしますよ!

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 まず、基本的に日本酒は出来上がった後に必ずお水を加えています(これを加水と言います)。主な目的はアルコール度を下げることですね。多くの日本酒は出来上がった直後はアルコール度が17〜19%なのですが、これは食中酒としては度数が高すぎるのです。

 お酒にお水を加えれば味が淡くなります。なので加水されたお酒は、軽快で滑らかな味わいになります。特別な表記のないアルコール度15〜16%の日本酒は、こういった味わいを持っていると想像ができます。

 逆に、お水を加えていないお酒が「原酒」と呼ばれる日本酒です。これは加水されたお酒とは正反対に、濃厚で迫力のある味わいになります。アルコール度15%でも原酒なら、お酒の香味がダイレクトに感じられるでしょう。

 日本酒にはもう1つお酒の濃度をコントロールする方法があります。それが「醸造アルコール添加」です。え、アル添(醸造アルコール添加の略称)って安酒をつくるための技術でしょって?ノンノン、実はお酒の濃度を調整できる優れたテクニックなのですよ〜。

 醸造アルコールは約30%の純アルコールと70%の水で構成されています。かなりの部分がアルコールではなく水なのですね。このため、お酒に対しては通常の加水と同じような効果があります。

 醸造アルコール添加をしたお酒は、加水したお酒と同じように淡く軽快な味わいになります。日本酒に与える影響は加水と同じなのですね。違う点は、添加してもアルコール度が下がらないことです。

 例えば、醸造アルコール添加をしてその後加水をしていない、アル添の原酒は不思議な軽さがある味わいになります。新潟ではよく見かけるので、試してみると面白いですよ(菊水のふなぐちなど)。

 醸造アルコール添加した上にさらに加水をすると2重にお酒が薄まることとなり、すごく淡い味わいになります。本醸造酒や普通酒がこれに当てはまりますね。普通酒の場合は、加水もアル添も多めに行うことがあり、薄まりすぎた味わいのバランスをとるために、酸味料や糖類を加えることがあります。

 まとめますと、日本酒の味の濃さは以下の順番になります

【とても濃い】    →純米の原酒
【そこそこ濃い】   →醸造アルコール添加の原酒
【普通】                    →加水した純米酒
【かなり淡い】         →醸造アルコール添加して加水をしたお酒

酒瓶

 この分類にアルコール度を加味して考えれば、飲む前にそのお酒のだいたいの濃さが想像できます。お酒の印象を決める重要なポイントなので、飲むたびに確認してみるといいでしょう。例えばアルコール度15%の原酒なら、「飲みやすい度数だけど、原酒なのでけっこう濃厚さもあるかも」と考えてみてください。

 お酒の濃さはとても重要な要素ですが、日本酒特有の複雑さでなかなかわかりにくいかと思います。今回の記事を参考にして、お酒の味と知識を紐づけてみてくださいね~。





【余談】
 以上がお酒の濃度を変更する方法ですが、これで終わらないのが日本酒の怖いところ。今解説した加水と醸造アルコール添加ですが、お酒に投入する量を選べるので、日本酒によってわりと幅があるんです。

 例えば大吟醸のような高級なアル添のお酒は一般的に醸造アルコールの添加量が少なく、純米酒に近い印象になったりします。逆に価格の安い普通酒などは、加水もアル添も多いのですごく淡い印象になるのです。

 また、他にも調整方法があって、お酒を搾る前に水を加えることで「淡い原酒」をつくることができます(搾ったあとに加水しなければ原酒と名乗れるため)。また逆にお酒を発酵させている最中に加える水の量を通常より減らすことにより、濃いお酒をつくる方法まであります(十水仕込み、元禄仕込みなどと呼ばれます)。もう、日本酒複雑過ぎ!って怒りたくもなりますね(笑)。